2014年3月22日土曜日

以前ご紹介した古い桐タンスの再生後の写真です。
再生前はこちら

桐は年が経つと黒ずんできます。
業界ではこれを「あく」が出ると言います。
「灰汁」のあくです。
「あい」が出るとも言います。
「あい」はどういう字を当てるのか判りませんが
暗い赤紫色に変色することがあるので
藍色の「藍」から来てるのかもしれません。

この黒ずみは桐の中の渋み、タンニンやフェノールといった成分が長い年月の間に木の表面に浮かび上がることで出て来ます。
桐の防虫効果はこのタンニンやフェノール類にあるらしいので、黒ずむことが一概に悪いとは言えません。
ただ、出来上がったばかりの桐タンスに黒ずみ、「あく」があっては商品になりません。
ということで、製材した後の桐は、まず最初に「あく」抜きの作業から始まります。

「あく」抜きは風通しの良い場所に桐の板を交互に立て掛け何年も雨にさらし、天日に干します。
風雨にさらされた桐板は「あく」が次第に浮き上がって表面は汚い灰色になりますが、ひとたび鉋で削るとその下には婚礼の白無垢姿に例えられる清潔で白い木肌があらわれます。

桐の「あく」抜きは梅雨の雨を何度もくぐらせると良いということをよく聞きます。
木工技術は先人の知恵や経験を土台にしてますので理由があっての事だと思いますが、先人はいちいちその理由を説明しないんでその辺が分かりづらいです。
当然、木の働きがすべて科学的に実証できてる訳でもありません。
最近は「あく」抜きもお湯に浸す方法が開発されて数週間で「あく」抜きが出来るようになりました。
天日干しと浸湯法の「あく」抜き効果の比較実験もされています。
まあ、コストと品質を見比べてどちらを選択するかは作り手の側にあるのですが、木(桐は草の仲間ですが)というモノの扱いは、どちらかと言えば理屈よりは経験の方が勝っているような気はします。