2014年9月17日水曜日


テレビボードの中に収納したAV機器を外からリモコンで操作するには、ガラスやアクリルなどの赤外線を透す素材を扉部分に使うことが一般的なやり方です。
テレビボードの場合、前面のかなりの面積を異素材が占めることになるので、木の家具らしさを演出するにはちょっと不都合でした。
最近では、同素材の木を使ったルーバーや細いスリットのデザインを扉に施すことで、その解決策とした例も見受けられます。
写真はウォールナットの無垢材のテレビボードですが、真ん中のフラップ扉のガラスに同素材のウォールナットの突き板=木を薄く削いだものを貼ることで、赤外線を透しながら、木の家具らしい雰囲気を壊すことの無いデザインになっています。
写真では突き板の部分が色が薄く見えているようですが、少し壁から離して置いたせいで、もしかしたら裏面の配線孔から入った光が透けて見えているのかもしれません。
機器とテレビの配線が終わって壁に戻せば光が入らなくなって色の薄さは解消するでしょう。

この商品に限っていえば突き板部分の杢目の流れ、色合い、塗膜がとても良い出来あがりで、無垢板の部分と良く調和していました。
光が透けるくらい薄い厚みの木片を、無垢の木の板と違和感なく隣り合わせに出来るテクニックがあるとデザインの幅は結構広がりそうです。
実際、この赤外線透過突き板はあっという間に全国の家具メーカーに広まりましたし、家の造り付けにもよく使われています。
気になるのは経年変化によって突き板の風合いがどんなふうに変わっていくのか、ですね。


2014年9月10日水曜日


先日、子供の国語のテストを見てたら、井原俊一という人の「日本の美林」という文の抜粋が載っていました。
森は資源なのか、それとも環境なのか?
とかく両極に振れがちな森林の現況を、森林ジャーナリストである著者が日本の美林を訪ね歩き、森林再生のヒントを取材した内容のようです。
調べてみたら初版は1997年で、時事的にはちょっと古いんですが、まことに中学生にふさわしいテーマで、これを読むことで少しでも木への興味が湧いてくれるとうれしいですね。

写真は節あり杉材のフローリングとウォールナットの食卓セットの組み合わせ。
壁も節ありのように写ってますが、これは腰壁ですので半分までです。
節がたくさんあっても、杉の場合おとなしいですね。
親戚の家がリフォームした際、天井をのぞいて壁の四周、床すべて節ありパイン材にしました。
最初は目がちらちらするようなにぎやかさでしたが、10年たった今でも変わりないように感じます。
木は古びてくると落ち着いた色合いに変わると言いますが、節ありパインの場合、木が黄変することで,節とその他の部分の色相の対比がいっそう強くなる感じがします。
ただ何年来とそこに住まいしてると耐性がつくようで、「もう慣れましたよ」と言っていました。
住めばみやこ、というのとはちょっと違いますが、人が暮らすということは地に足がつくようにしっかり、たくましいものですね。

2014年9月3日水曜日

お知らせです。

お世話になっています倉吉市の荒井工務店さんが完成見学会を開催されます。
9月6日(土)、7日(日)。
場所は倉吉市の上井です。
詳しくは荒井工務店さんのホームページをご覧になってください。

www.arai-koumuten.jp

木の香りがふんだんに漂う「木のお家」に、飛騨高山の無垢の木の家具の組み合わせ。
木と木で、ちょっと無骨になりそうなところを、優しく洗練された雰囲気に変えているのは、倉吉から米子まで何度も脚をはこんで下さったお客様のこだわりとセンスの良さでしょうか。
お時間のある方は見に行かれてはいかがでしょう。

2014年8月22日金曜日

写真はホワイトオーク材の食卓天板です。
前回アップした写真よりは色、杢の感じがお分かり頂けるかと思います。
塗装は大谷塗料さんのバトンクリア。
バトンは植物系オイルですが、蜜ロウに比べると少し光沢が出るようです。
汚れにくさはバトンのほうが強そうに思えます。
ただし取り扱いとかメンテナンスの容易さは蜜ロウが勝っています。
一長一短といったところでしょうか。

前回のソファと同じく、こちらも見えがかりに節あり材を使っています。
今でこそ節あり材の特有な表情、自然な木らしさを面白がって下さるようになりましたが、以前はこんな使い方をすると安手に見られました。
若いお客様が節あり家具を気に入って買って下さって、いざ配達するとお家のご老人が「なんだ、この安もんは!」とか言われたことがあります。
20年くらい前のお話ですが、日本人の無節信仰という木に対する感性がまだ残っていたころですね。

日本人の木に対する感性ということで言えば、こんなお話もあります。
一本の木には立木のとき、太陽の光をいっぱいに浴びる南東側の面があります。
南東側の面を「日面(ひおもて)」と言い、反対の北東面を「日裏(ひうら)」と言います。
自然、枝葉は日面側に多く、節も多く残ります。
飛鳥時代の工匠たちは木が自然に生えていた時と同じ状態に、柱の日面は南向きに建てることが、木を生かし建物を長持ちさせると考えました。
ところが古代建築の正門は中国の影響かどうか南を向いて造られています。
柱の日面を南面させると建物の正面玄関側は節のある材を使った荒い印象の見栄えになります。
飛鳥人はそれでも良いと考えました。
無節信仰の以前にはこういった感性もあったのです。
以上は法隆寺をはじめたくさんの飛鳥時代の伽藍の修復、復興にたずさわった宮大工の西岡常一さんがかつてお話されていたことです。
私としてはいつ頃それが変わっていったのかということに興味を覚えます。
いつか調べてみたいですね。






2014年8月21日木曜日

写真は最近入荷したデイベッドソファです。
ソファベッドと違うところは、背もたれを倒すなどの余分な動作をせず、すぐそのまま寝られることでしょうか。
長さ180センチ幅75センチのフラットで少し固めの座面は、うたた寝するのに最適です。
汗が気になる方のために座面下には、シーツやパッドを収納できるスペースも嬉しいところですね。
とは言っても当店ではどちらかと言えばソファの要素を重視して導入を決めました。
これにかぎらないんですが、よくよく眺めているうちにこのソファの置かれているお部屋のイメージがだんだんはっきりしてきました。
するとソファに並んで座っているご家族のお顔までが眼に浮かぶようになってきます。
こういう時は売れます。(売れないことも結構あるんであてにならない)
それからまだちょっとうまく説明できないんですが、「見たことありそうで、無い」デザインに思えます。
ちょっと不思議な感じを受けました。
デザインは小泉誠さん。
小泉さんのデザインは個人的には、最初はよくわかんないけど、後からじわじわ良さが分かってきて、いつの間にか小泉ワールドに嵌っていくというパターンですね。
ディテールの隅々にまで細やかな気を使っていながらそれを感じさせないところがすごい。
フレーム材はホワイトオーク。
太くて濃い木目が豪快ですね。
最近の家具では同じブナ科のレッドオーク材もよく使われています。
着色前なら見分けがつき易いのですが、家具屋の店頭に並んでいる状態では違いが分かりづらいかもしれません。
ちなみに洋樽の材料はホワイトオークのほう。
レッドオークでは駄目だそうです。
木の成長が止まると水の通り道の導管が塞がれますが、ホワイトオーク材の導管の塞がり具合とわずかな木の呼吸が洋酒の味わいに絶妙に影響しているとのこと。
微妙なものですね。






2014年8月7日木曜日

写真はクスノキのチェストとドレッサー。
クスノキ本来の色目はこんな感じです。
濃く着色することで材の表情を浮き立たせる一方、渋めになりすぎないようモダンなデザインで仕上げてあります。
クスノキは家具屋としてはわりあい身近な木材で、なによりその芳香が強い印象ですね。
樟脳の匂い。

飛鳥時代の日本の仏像はほぼすべてクスノキでつくられているようですが、これは中国で霊木視された香木「白檀(ビャクダン)」の代用だそうです。
ちなみに飛鳥仏の中で唯一の例外が有名な「広隆寺の宝冠弥勒像」。
こちらは赤松とクスノキのコンビで、後年の補修はヒノキ材です。
用材として赤松は朝鮮半島の木。
同じくクスノキは木へんに南と書くように日本の木。
加えて半跏思惟の姿で微笑む西域風の面立ち。
宝冠弥勒像がどこで作られたかについては、いまだ判明できないようです。
まああまり科学的に解明されるのも味のない気がしますが。

それはともかく、「樟」と「楠」。
どちらも「クスノキ」と読ませますが、今まで字のニュアンスの違いを気にしたことがありませんでしたのでちょっと調べてみました。
分類的には「樟」はクスノキ科ニッケイ属、「楠」は同じくクスノキ科のタブノキ属に分けられるそうです。ニッケイは肉桂、ニッキ、京都の八つ橋の香り付けに使われてますね。
シナモンも同じくクスノキ科の樹皮を乾燥させた香料ですが、スリランカ原産のクスノキを原料とした場合に特にそう呼ばれるらしいです。

一方、タブノキは平地に生える大高木で、鳥取県では神社の周辺でよく見かけます。人の手で守られているということですね。
用材としてのタブノキはもう少し山寄りで自生しているんでしょう。
タブノキは線香の原料の一部に使われていたようですが、タブノキの樹皮から線香を自作した方のブログを読むとさほど匂わないそうです。
ただ葉を千切ると樟脳の匂いがするそうで、ニッケイ属、タブノキ属ともにクスノキ科の特徴である芳香に関しては同じですね。
「クスノキの家具」と表記する場合、家具屋的には「樟」と書くことが多く、これは樟脳の箪笥の虫除け作用を連想させる、なかなか良いやり方かなと思ってましたが、実際、写真のチェスト、抽斗の箱組みだけは桐を使っていますがその他はクスノキの総無垢の作りで、しっかりと香ってました。


2014年7月31日木曜日


四月以降更新が出来ず、心苦しかったんですがようやく再開できそうです。
更新停止後も当ブログを見に来てくださる方がいらっしゃったようで申し訳ありません。
今更ながらよろしくおつきあい下さるようお願いいたします。

まずは更新停止中の当店のようすなど、新しく入荷した商品のご紹介も含めてお知らせしたいと思います。
世間的には消費増税前後のめまぐるしい動きがあったようですね。
メーカーさんによっては駆け込み需要に対応するのに7月までかかるとか。
それはそれで良いお話なんですが、まあ誰もが口にするのがそれ以降のこと。
売り上げの急激な増減というのは長い眼でみればあまり良いことではなさそうです。
当店は田舎の小さなお店ということもあってそういったことに係わりは少ないんですが、実はこの数ヶ月の間にてんてこまいになるようなことがありました。
家具の修理です。
消費税も上がるからこの際修理をお願いしようか、っていう感じで2月頃からぽつぽつ入ってきた修理依頼が4月以降も途切れることなく積み重なって、7月も終わろうかという今頃になってようやく片付こうかというところです。
残りは2つ。
食卓の天板の補色と桐たんすの染み抜き。
小売店がやる修理としては少々手強そうなんでちょっとどきどきしています。

写真はいつもお世話になっている松江市のルレストランハラさん。
いつも予約でいっぱいのお店なんですが、先日お休みの日を利用して椅子のフレームのオイルの塗り直しをしてきました。
あまり見慣れない風景なんでしょうね。道行く人が不思議そうな感じで覗きこんでました。






2014年4月5日土曜日

写真は宮崎椅子製作所、PEPEアームチェア。
材はブラックチェリー。
当初のピンクがかった明色が、年とともに味わい深い濃色へ変わっていくのが楽しみな木です。
当店に展示してまる6年経ちました。
かなり赤味が強くなりましたが、濃さはそれほどでもありません。
当店展示のブラックチェリー材の商品の中には驚くほど濃い赤暗色に変わってきたものもあります。
それに比べるとまだ普通の人が思い浮かべる「チェリー色」の範囲の内に収まっているところでしょう。
この先どんな風に変化していくのか楽しみです。
肘と後ろ脚の接合部分がごく一部白っぽいのがわかりますでしょうか。
あそこは丸太の外側部分、白太(しらた)といわれる部位です。
メーカーによって違いますが、宮崎椅子製作所では見える場所に使われるのはまれです。
白太といっても薄皮一枚の厚みですので強度的に何の問題も無いですし、レア物的な意味合いで貴重な一脚ですね。

座面の上のサンプルファブリックは新柄のART10000-21。
倉吉からご来店頂いたお客様が選んだ組み合わせです。
ちょっと北欧っぽい感じになりそうで出来上がるのが待ち遠しいです。
米子と倉吉は一時間ちょいくらいの距離でしたが、このたび高速道路が開通してかなり短縮されました。
車が一台も走ってない道路を写して無駄の象徴と揶揄される山陰の高速道路ですが、無料期間の今は結構な利用客があります。
無ければ無いで不便に思わなかったんですが、あれば便利なものですね。
ただ一般道がとたんに寂れるのが田舎の辛いところでしょうか。



2014年3月30日日曜日

写真は宮崎椅子製作所、UUチェア。
納品前です。
フレームはアッシュ材。
ファブリックは今、人気の新柄ART10000。
入荷待ちのものが何点かありますので、ファブリックと樹種との組み合わせ例を入荷次第ご紹介したいと思っています。
それにしても白い木ですね。
北欧系の家具はアッシュ材をソープフィニッシュや、白色顔料をオイルに混ぜて白木をより白く見せる仕上げ方もありますが、写真のアッシュは無着色です。
蜜ロウで仕上げていますのでより厳密には濡れ色になっているはずですが、それでもこの白さにはびっくりです。

アッシュ材は以前ご紹介したように白い木肌にうす茶色の年輪がくっきりと、ほど良い間隔で並んでいるところが特徴です。
ただ自然のものなので時にその間隔が間が抜けるほど広いことがあって、同質を要求される量産品を売っていくにはお客様へのご説明が欠かせません。
板幅の広いパーツを使った製品は特にそうで、お客様には事前にアッシュ材の色んな表情をお知らせするようにしています。
その点、写真のUUチェアは見えがかりを細身のパーツだけで構成してありますので、杢のばらつきの影響を受けにくいデザインと言えます。
こちらのテーブルにセッティングしたんですが、ホワイトオークとアッシュというちょっとうるさい「杢」同士の組み合わせにしては品良くまとまったような気がします。
デザインと樹種の組み合わせは微妙なものですね



2014年3月26日水曜日

写真はぺぺラウンジチェア。
フレームはブラックチェリー材。座面はオイルレザーが張ってあります。
カジュアルなデザインなんですが、素材のグレードを感じますね。
オイルレザーは革の加工の際、植物オイルをしみ込ませることで革をよりしなやかにし、自然な風合いを残したまま耐久性を持たせたものです。
とは言っても扱いはなかなか面倒で、お手入れがかかせません。
そのあたりのことはすでにオイルレザーのバッグや小物をお持ちのお客様の方がよく知ってらっしゃる場合が多く、そのことで敬遠されることはあまりありません。
この椅子に使われている革は染料染めのタンニンなめしなので余計にデリケートな素材なんですが、オイルレザーの魅力というのは替え難いものがあるんでしょうね。

家具屋で従来あつかってきた革は、どちらかと言えば量産的で無個性になるよう加工された革が多かったようです。
牛革をクロームでなめして、品質にばらつきの無いよう型押しし、実用面を考え銀面をしっかりコーティングしたタイプが多かったようです。
ヌメ革やイタリア製の革が使われている高級品もありますが全体から見れば一部でしょう。
家具に比べると衣料品や雑貨で使われている革はすごく種類が多くてうらやましくなります。
前に栃木レザーという会社をネットで検索しているうちにこんな文に出会ったことがあります。
外国に比べ日本製の革に満足できないという質問に寄せられた回答です。
Q 「日本はまだまだ技術的には追いついていない」
A それはどうでしょうか。
  私は単に、日本のメーカーから良い革を求められていないだけな様に感じます。
  よりトラブルの少ない革、よりメーカーにとって生産性の高い革の注文が多いだけの気がします。
  革の展示会が年2回浅草で開かれています。
  ここでは縛りのない、のびのびと作られた革を目にすることができますよ。

商売的にはお客様のユニークな感性が多種多様なモノ作りを支えているように思えます。

2014年3月22日土曜日

以前ご紹介した古い桐タンスの再生後の写真です。
再生前はこちら

桐は年が経つと黒ずんできます。
業界ではこれを「あく」が出ると言います。
「灰汁」のあくです。
「あい」が出るとも言います。
「あい」はどういう字を当てるのか判りませんが
暗い赤紫色に変色することがあるので
藍色の「藍」から来てるのかもしれません。

この黒ずみは桐の中の渋み、タンニンやフェノールといった成分が長い年月の間に木の表面に浮かび上がることで出て来ます。
桐の防虫効果はこのタンニンやフェノール類にあるらしいので、黒ずむことが一概に悪いとは言えません。
ただ、出来上がったばかりの桐タンスに黒ずみ、「あく」があっては商品になりません。
ということで、製材した後の桐は、まず最初に「あく」抜きの作業から始まります。

「あく」抜きは風通しの良い場所に桐の板を交互に立て掛け何年も雨にさらし、天日に干します。
風雨にさらされた桐板は「あく」が次第に浮き上がって表面は汚い灰色になりますが、ひとたび鉋で削るとその下には婚礼の白無垢姿に例えられる清潔で白い木肌があらわれます。

桐の「あく」抜きは梅雨の雨を何度もくぐらせると良いということをよく聞きます。
木工技術は先人の知恵や経験を土台にしてますので理由があっての事だと思いますが、先人はいちいちその理由を説明しないんでその辺が分かりづらいです。
当然、木の働きがすべて科学的に実証できてる訳でもありません。
最近は「あく」抜きもお湯に浸す方法が開発されて数週間で「あく」抜きが出来るようになりました。
天日干しと浸湯法の「あく」抜き効果の比較実験もされています。
まあ、コストと品質を見比べてどちらを選択するかは作り手の側にあるのですが、木(桐は草の仲間ですが)というモノの扱いは、どちらかと言えば理屈よりは経験の方が勝っているような気はします。

2014年3月14日金曜日

宮崎椅子製作所の新作ご紹介、つづきです。

たまに都会に出てみると通りを歩いている人の多さにびっくりしますね。
田舎では車は多いけど歩いている人は少ない。
当店はお客様の99%が車で来店されます。
日中、店の前を歩いて通り過ぎる人の数は10人にも満たないんじゃないでしょうか。
比較するの変ですが、さすが六本木でした。
お店の数も、歩いてる人の数も半端ないし、10人に4人は外人さんで、おまけにその外人さんですら驚くほど多様性に満ちています。
多様性が活気を生むとよく聞きますが、人の数があってこその多様性かな。
なんかそんな感じの印象を受けました。

六本木での新作発表会の帰りに浜松町の駅前で友人と会ったんですが、連れて行かれたお店はそこそこ人気なようで行列が出来ていました。
しばらく待たされて入った割りには料理もサービスも価格も普通以下に思えて、おいおいという感じでした。
勝ち残るのが良いお店という見方もありますが、残ったお店と残って欲しいお店が同じとは限りませんし、人口最小県の鳥取県では本当に良いお店ですら存続は容易ではありません。
この人気店には料理サービス価格といった本質以外のところに何かの仕掛けがあるのかもしれませんが、それだけでお店の人気を維持しているとしたら良いお店でも何でもなく、ただ東京の人口の多さにあぐらをかいているだけのような気がしますが、どうでしょう。
都会と田舎では競争の形態が違うのかもしれませんけど。
うーん、やっぱり田舎者の僻みかな。


お知らせです。
米子建築塾さんが設立10周年を迎え合同作品展を開催されます。

3月28日(金)~31日(月)
10:00 ~ 18:00(最終日は16:30まで)
米子市美術館 第3展示室にて

今回は米子建築塾としての活動だけでなく、メンバー個々の作品も合わせて展示されるそうです。
29日(土)の18:00~21:00はイオン米子駅前のガイナックスシアターで「マチ再生の思考は何をもたらすのか」と題したギャラリートークも開催されます。
ぜひ、ご覧になって下さい。
ちょこっと時間が取れそうなんで私も見にいきたいですね。

米子建築塾
八田雅章さん        八田雅章建築計画事務所
山崎和弥さん        山崎計画設計工房
タカマスヨシコさん      米子高専建築学科准教授
来間直樹さん        クルマナオキ建築設計事務所
しろえだしんさん      ぱてぃなでざいん建築設計事務所
白石博昭さん        しらいし設計室
木村智彦さん        グラムデザイン一級建築士事務所
萬井博行さん        よろい環境計画事務所
小椋弘佳さん        米子高専建築学科助教
藤原伸一さん        チームスタジオアーキテクツ

お問い合わせ 0859(33)7120 米子建築塾事務局

2014年3月6日木曜日

宮崎椅子製作所の新作ご紹介です。

昨年の11月に東京六本木のアクシスビルで宮崎椅子さんの新作発表会がありました。
「力(ちから)」を感じさせますね。
新しいことをやろうという意欲。
革新性。
モノを作り出すよろこび。
そういった前に進む「力」を感じました。
今や、宮崎椅子製作所は成熟したメーカーの一つになったと思いますが、経験にあぐらをかかない姿勢は見ていて爽快です。
若い職人さん達も巣から飛び出て活躍しているようですし、家具業界の閉塞感に風穴を開ける存在といって良いでしょう。
期待しています。

新作で眼についたのはやはり縫製の丁寧さです。
前回の新作に取り入れられた木部とファブリックの段差のつかない面構成が今回も採用されています。
その連続面をつい指でスリスリしたくなるの私だけではなかったと見えて、多くの若者たちが上から下から横から、覗き込んで説明をうけてました。
宮崎椅子さんの展示会は、どちらかと言えばおしゃれな服を着た若い人が圧倒的に多く、私のような昔ながらの家具屋おやじは場違いな感じですが、モノを見る目というのはいろんな見方を知ることで養われると思いますので、今回の新作を彼らがどのように評価したのか気になるところではあります。


2014年2月28日金曜日

写真はKITOKIテーブル。
節の入り様がおとなしめですね。
無垢の木というのは同じものが無いんで梱包を開くたびにドキドキします。

前回ご紹介した難波宮跡から出土された桂材の柱の伐採時期が七世紀前半と書きましたが、実は驚くべきことに1年単位で測定結果が出ています。
測定試料が2片あってひとつは612年、ひとつは583年です。
この記事に興味を惹かれたのは「桂」という文字もですが、1000年以上も前のことがなんでこんなに正確にわかるんだろうという疑問でした。

遺跡からの出土品の年代測定法といえばC14法が有名です。
大雑把に言えば、C14=炭素14は大気や川や草木、動物の体の中で常に一定の割合で存在している。
炭素14は放射性同位体で、崩壊していくスピードが正確なので時計の役割になる。
このふたつの特性から試料の中の崩壊した炭素14の数、もしくは残っている数を数えて年代測定する、という方法です。
ただ大昔も今も炭素14の割合が同じという前提なので、大昔のことがわからない以上色んな補正を加えないといけないせいか、ちょっと「恣意的」といわれたりもしています。
よく知られた例で縄文時代の始まりはいつ頃か?ということに関して出土品をC14法で測定した結果が、従来の考古学会の定説とかけ離れてトンデモ扱いされたこともあります。
何千年も何万年も前のことなんで、まあちょっとやそっとの誤差はあって当たり前だとは思いますが。

最初の難波宮の記事に戻ると、この柱の測定に使われた手法は炭素でなく酸素の同位体を使ったまったく新しいやり方だそうです。
実はC14法は調べててもさっぱりちんぷんかんぷんだったんですが、こちらの酸素年代法?はとっつきやすくて面白い。
木、年輪、セルロース(木の細胞の一部)、雨量、といった家具屋的には身近なキーワードを使って、シンプルかつ明快に説明されています。

と、ここまで書いて重大な間違いを発見。
この記事は日本海新聞で見つけて、朝日新聞のネット版も見ましたが、今読売ネット版を見ると出土した柱の木の種類は1本は「コウヤマキ」、もう一本は不明とありました。
47ニュース、日本海新聞をいま一度みてみると確かに「コウヤマキ」と出ています。
そうなると「桂(かつら)」と出ていたのは朝日かな、とか思いましたがすでに見れなくなってました。
うーん。
なんだか「柱(はしら)」の文字を「桂(かつら)」と見間違えたっぽいような気がしてきました。


2014年2月26日水曜日

昨日のニュースで、大阪市の難波宮(なにわのみや)跡から出土した桂材の柱を最新の年代測定法で測定したところ七世紀前半に伐採されたことが判ったそうです。
今朝の新聞を見て知ったのですが、まず見出しの「桂(かつら)材の柱」という部分に目を惹かれました。

桂の木というと碁盤、将棋盤のイメージがありましたが、碁盤や将棋盤には榧(かや)の木という最強のブランド樹種があるせいか、今ひとつピンときませんでした。
30年くらい前、桂材の婚礼タンスを扱ったことがあり、当時のお客さんは桂と聞くと「桂は良いですよね」と妙に納得されていたのを覚えてます。
それ以来、桂材の家具を目にしたことはありません。
桂の板の杢目や色味、風合いももう覚えていません。
今、ネットで「桂、材、用途」と検索すると彫刻、まな板、仏具等いろいろ出てきますね。
興味深かったのは楽器です。
1980年前後にヤマハ製のギターのボディに使われているようです。
残念ながら画像を見つけることは出来ませんでしたが、桂が使用された経緯を推測している文章がおもしろかったです。

高価なギターのボディに高級材、マホガニーが使われたりしますが、廉価品の場合代用材としてアガチスを使うそうです。
アガチスは家具でもお馴染みの南洋材で、仕上げ方次第ではあらゆる銘木の代用材になるという非常に便利な木だそうです。しかも安い。
で、そのアガチスですが日本での流通名のいくつもある中のひとつに「南洋桂」というものがあります。
見てくれはまったく別物なのに「桂」の名が付くところの胡散臭さはこの際脇に置いとくとして、実際に桂でギターを作ってしまったというのはこのアガチスに遠因があるのでは、という内容でした。
桂のギターはごく短期間に生産終了してしまったみたいです。
ヤマハのウェブサイトを見ましたが、なぜギターに桂の木を使おうと思ったのかということはわかりませんでした。
ただ、ネットを検索しながら楽器の木の種類と音色の違いについて書かれた文章のいくつかはとても魅惑的でした。
楽器の材料の代用材は見かけよりも音色を重視しているのかも、と思いました。

写真は桐タンス修理前。
すでに修理が終わってますので後日アップしたいと思います。
追記 柱の樹種は「桂(かつら)」ではなく「高野槙(こうやまき)」の間違いでした。
    2月28日のブログをご参照ください。




2014年2月22日土曜日

写真は前回ご紹介したキッチンキャビネットの真上に取り付けた同じくウォールナットの吊り戸棚。
お家の設計の段階からご相談いだだいてましたので、壁の向こう側には取り付け用の補強がしてあり無垢板の前扉の重量をしっかり支えてもらってます。
白くて明るい内装にウォールナット材のナチュラルな褐色がよく引き立っているようですね。
ここの、この場所に無垢板のウォールナット材を持ってきたいっていうお客様のこだわりがよく分かりますし、設計段階で思い描いていたイメージに近かったんじゃないでしょうか。
最初は対面キッチンの陰に隠れてせっかくのシナモノが勿体無いなあとか思いましたが、リビング側から、ちらりと見える感じが逆に高級感を感じさせてました。
ちら見せ効果ってすごいですね。
当店ではウォールナット材をけっこう扱っていますが、木の「素」の表情を重視していますので見せ方としてはナチュラルな風合いのモノが多く、「素朴」とは思っても「高級」と感じられるお客様は少ないと思います。
今回、キッチン回りということもあって木の表面をウレタン塗料で覆ったことで若干「ツヤ」と「膜」の感じが出ました。
ちら見せ効果と相まっての高級感なんでしょうか。


申し訳ありません。
ブログの更新が滞ってしまいました。
ブラウザをクロームに替えてからもいろいろ不具合が頻発しました。
ようやく元どおりになりましたので、更新がんばっていきたいと思います。

写真はウォールナット材のキャビネット。
ご新築のキッチンに合わせて作った別注品です。
かなり早い段階からご相談に来ていただいたおかげで、打ち合わせもゆっくり進めることが出来てお家の完成にも間に合いました。
当店は国産メーカー、それもわりと小さめの工場の品物を扱うことがほとんどなので、納期が一ヶ月、二ヶ月は当たり前、中には四ヶ月くらいかかってやっと納品なんてことがざらにあります。
ご新築の際、食卓セットをご注文いただいていながら、納期が間に合わないせいで古い卓袱台で何ヶ月か我慢していただくってことも以前はよくありました。
待っていただけるというのはありがたいことですね。
もっと以前は、家が出来上がるほんの数週間前ぐらいに家具屋回り。ご予算にあわせて家中の家具すべて一気に買い揃えるパターンがほとんどでした。
家具の生産、在庫、流通がそのパターンの納期に対応出来ていたということです。
まだ家具が売れてた頃の話ですね、
家具が売れなくなって在庫がだぶついてくると、国産メーカーのいくつかは規模の大小を問わず受注生産に切り替えました。
注文があってから作るので自然、納期は延びます。
納期が延びるということはメーカー自身の首を絞めることですので、大メーカーは生産管理のコンサルタントを外部から呼び、それをしない小メーカーはより付加価値の高いものづくりへ移行していきました。
ざっかけて言えば、当店に関しては小さな工場の加工に手間のかかるモノを扱うようになったことで納期がしだいに延びてきたと言えます。
ただ一方、それらの家具が手許に届くまで何ヶ月でも待って下さるお客様の意識の変化というものも見過ごしてはいけないと思います。





2014年1月11日土曜日

お知らせです。
1月12日(日)、13日(月)の2日間、所用のため臨時休業します。
14日(火)は定休日ですが営業します。
15日(水)以降、平常とおり営業します。
ご迷惑、お掛けしますがよろしくお願いいたします。

写真は天童木工の椅子、張替え後の写真です。
もともとのオリジナルは、ブナ突板の座面上の四周を1センチほど余して溝を突き、張り地を納めるやり方でした。
その四周1センチ幅の突き板がポロポロと剥がれ落ちて汚らしくなっていた為、お客様と相談の上、座面全部を覆って隠すやり方にしてみましたが、オリジナルに比べるとなんだかモッサリした印象になりました。
むずかしいですね。

薄板を何枚も張り合わせた「面」を型枠にはめて3次元的な「形」を作り出すこと、あるいはそのモノを成型合板といいます。
天童木工はその「形」をデザインするのに、社内社外のデザイナーを活用することで有名でした。
今まで柳宗理とか長大作のイメージが強かったんですが、調べてみると色んなデザイナーが関わっているんですね。
しかもそれぞれのデザイナーが天童木工の持っている技術を素直に生かしたデザインをしている、と思いました。
それぞれの作品がそれぞれのデザイナーの個性を表現しながら、それでいて天童木工らしさを失わない共通の何かがあるように思えます。
デザイナーとメーカーの関係というと一方通行になりがちですが、双方がお互いにリスペクトする姿勢が感じられていいですね。







2014年1月6日月曜日

新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

写真は当地では「石馬さん」の愛称で知られる古墳時代の埴輪です。
石馬さんは淀江町上淀地区の「山の根」と言う社地で長らく祭られてきたということが江戸初期の文献に残っていて、明治時代の合祀政策で近くの「天神垣神社」に移され、現在は近くの歴史資料館に保存されています。
昭和34年に考古学上の資料的価値を認められて国の重要文化財に指定されましたが、先の文献の「長く祭られてきた」っていうこと以外はほぼ何も分かっていません。
私が子供の頃は神社の境内の片隅に、簡素な屋根を乗せた台座に祭られていました。
長年の風雨にさらされて本来のリアルな表現が失われた造形は、逆に埴輪っぽい稚拙さが感じられます。
ちょっとユーモラスな印象ですね。