2012年2月26日日曜日

バットのお話でメープルが出てきましたのでご紹介します。

写真は直径115センチのメープルの食卓です。
三本脚がきれいですね。

椅子とかスツールでは結構見かけますが、食卓で三本脚が使われているのはめずらしいです。
中心に重量が掛かるときの三本脚は頼りなげな見た目と違い十分な強度を発揮しますが、端に重量が掛かるととたんに不安定になります。

そこで天板に堅くて重いメープルの無垢材を使い、重しの役割をさせています。
実際、天板端に力を加えても他端が浮くようなことはありませんでした。とてもどっしりとしています。
なのに軽やか。

メープル材のちょっと硬質な木肌を上手にデザインに取り込んだ良品ですね。
ホワイトアッシュ続きです。

メジャーリーグで何年か前に、より打球を遠くへ飛ばせるということでメープルのバットを使うバッターが増えたそうですが、折れたバットが野手方向へ飛ぶ頻度が高くてメープルのバットを禁止しようという動きがあることがニュースで流れていました。
打球の飛距離やバットの折損はいろんな要素が複雑に絡んできます。
単純にメープルがどうという話ではないと思うのでこのニュースはちょっと端折り過ぎな感じはします。
が、この話題を追ってネットで検索してみるといろいろと興味深い記事に当たりました。

松井秀樹選手がメジャーリーグに移籍する際、揺れる球を多用するメジャーの投球を考えて
バットの形状をV字型からビール瓶型へ変更したそうです。
ヘッド下30センチの位置の直径でプラス2.5センチ。
「スイートスポット」を大きくしたいということだそうです。
さらに松井選手の要求は従来のものより20グラム軽量化すること。

ホワイトアッシュ0.55~0.60、メ ープル0.55~0.65、アオダモ0.65~0.70
この数字はそれぞれの樹種の比重です。
ホワイトアッシュとメープルは大体似たような重さでアオダモはそれより重いことが分かります。
体積は増えるが重量は軽くという矛盾をどのように解決したのか分かりませんが、ミズノは見事これに応えてこの3つの樹種で作ったバットを松井選手に送りました。

その後の活躍はご存知の通りですが、はたしてこの3つの樹種のうちどのバットが使用されたのかは分かりません。
この記事を書かれたのは「木材工学」著者の中野達夫先生です。
中野先生は重量軽減を評価し、一方でその重量軽減が木材の過乾燥によるものとした場合の不安、特にアオダモが湿気を吸い込んで重量が元に戻ることを心配されてました。乾燥剤入りのバットケースが良いとのこと。

http://www.asahi-net.or.jp/~hf2t-nkn/jcom/hajimeni.html
「木は万能選手」から引用させてもらいました。
天板サイズ160cm×85cmのホワイトアッシュ材オイル仕上げの食卓です。
ランダムな幅の6枚の板をはぎ合わせています。
店頭に並べていた展示品の木目がとてもきれいでしたので、お客様と相談して現物を納品することにしました。写真は納品前のオイル塗り直し後の木肌です。

少しばかりアッシュの木にまつわるお話をご紹介したいと思います。

吸血鬼退治の定番といえば十字架、にんにく、先端を尖らせた白木の杭の3点セットですが、この杭、白木とありますが実はホワイトアッシュのことです。ホワイトアッシュの和訳「トネリコ」と聞けばピンと来る方もおられるはず。トネリコは古代北欧社会で中心となる木、「世界樹」に見立てられました。トネリコ=「神聖な木」=吸血鬼退治と関連してくるわけです。

ホワイトアッシュの用途は吸血鬼退治だけでなく、現代のメジャーリーガー達のバットにも使われています。木製バットで野球をした事のある方なら上の写真は一目瞭然ですね。ちなみに日本のバットはアオダモ。アオダモもホワイトアッシュの和訳に出ていますが、自然の木の場合の和訳は近しい種類の木という意味ですのでよく似ている別物です。
すべてがすべて野球のバットに使われたというわけではないでしょうが今、日本では良いアオダモが少ないそうです。遅ればせながら野球関係者の方が植林をされているという話を聞きました。いいことですね。

2012年2月22日水曜日

無節源平の杉の床板です。
お客様のお話では智頭町の(株)サカモトさんからお取寄せされたそうです。
サカモトさんといえば、智頭杉を使った家具とかブラインドで 以前からそのお名前だけは聞いていましたが、本業の建材については私はほとんど無知でした。
こちらのご新居を設計されたのは、いつもお世話になっている「よろい環境計画事務所」の萬井博行さん。その萬井さんのご縁で(株)サカモトの田代さんとお話させていただく機会を昨年得ました。
智頭杉の魅力、PRの仕方等々について熱く語られる姿がとても印象に残っています。

家具材料としての杉は柔らかいことで不向きとされた時期がしばらくありましたが、近年開発された圧縮加工技術によって強度、硬度を補うことが出来るようになり様々の杉の家具が市場に出るようになりました。サカモトさんが関わっておられる県のプロジェクトから作られた杉の家具のシリーズなんかも個人的には好きです。
ただ残念なことに杉に魅力を感じる人はその柔らかい風合いに魅力を感じることがあっても、圧縮加工された強くて硬い杉の木肌には少し違和感を感じられる方もいるようでして、なかなか難しいものですね。

写真は宮崎椅子製作所「hata」チェア。
ブラックチェリー材。
テーブルも同じく。




2012年2月19日日曜日

写真は回転食堂椅子の脚部。
接合部分が緩んでガタツキが生じた為、いったんバラして再組み立てしている様子です。
わずか数年のご使用でこのようになりました。

回転タイプの木製椅子の欠点のひとつに、金属製の回転盤内のベアリングの消耗によるぐらつきがありますが、これ自体はご使用による損耗であって欠点とは言えないのかもしれません。
むしろ問題はその取替え時期に同規格の交換パーツがあるのかないのか不明な点にあります。
以前どうしても見つからず困っていたとき、運良く他社製品が流用できて助かったことがありますがまぐれ、偶然です。
取替え時期が3年後になるのか10年後になるのかは使用環境によって違います。
ぐらつき始めたらどんなに立派な木やクッションで作られていても座れたものではありません。
製造メーカーさんにはこのあたりもうちょっとでも考えて頂ければと思います。

と、このように書きましたが実際はベアリング損耗によるぐらつきは意外なほど数少なく、修理で多いのは上記写真のような木部の不具合です。特に四方向へ転ばせた脚の接合部分。

輸入量産品ということで仕口はすべて2本ダボ組み。
当店は普通の家具店ですのでダボ組みOKのスタンスです。
アリ組み、ホゾ組みが優れているのは分かりますが使う場所によってはオーバークオリティな気がしますし、精度の出たダボ組みの強度は家具屋さんなら経験的に知っています。
処分用に持ち帰ったダボ構造の古い椅子をバラそうとして恐ろしく手こずったりして。

と、同時に簡単に抜けてしまうのも同じくダボ組み。
そのあたり「精度」の問題に帰するのが妥当かどうか分かりません。回転タイプの木製椅子は負荷のかかり方が従来の椅子製作の要領とは異なっているだろうし。

商品サイクルがどんどん短くなりつつある今、年月をかけて製造工程を見直しながら、マイナーチェンジを繰り返して一つの商品を完成型に近づけていくなんて夢のようなお話なんだなと思ったりもします。
むろんその夢を実現させようと頑張っている家具メーカーも数は少ないですがあります。
応援したいと思っています。



2012年2月17日金曜日


パープルハート続き。

写真はパープルハートの木片です。
頂いてから1年以上経過しています。
軽く表面を削って蜜蝋を塗ってから写してみました。

お客様のご要望は玄関でブーツとかを履くときのためのお洒落なスツール。
お洒落かどうかは別にして、小泉誠さんらしい「構成」を感じさせるスツールです。
家具をオブジェっぽくさせないところがいいですね。

で、お客様が選ばれた樹種がパープルハート。
初見のビビッドな紫が強く印象に残っていましたので、実物はムラサキイモですよと念押ししましたがそれで良いとのこと。実際出来上がったのを見ると前回アップした写真の通り。
あれっ、て感じです。
若干、紫が入ってるとはいえそれも落ち着いた紫。

このお客様は自然な木色の家具でお部屋をコーディネートされてますので似合うといえば似合うのですが、挿し色としての「ムラサキイモ」としては少々物足りなかったなかな、と想像します。
自然を相手は難しい、けど楽しいですね。

2012年2月16日木曜日

写真は宮崎椅子製作所「dandan」スツール。
材はパープルハートという木だそうです。
パープル(紫色の)ハート(心材)の名前通り紫色の木です。
あまりなじみのある木ではありません。
手持ちの木材辞典にも載ってないので、ネットで少しばかり調べてみました。

産はメキシコからブラジル南部、マメ科の広葉樹で木質は重厚、伐採直後は褐色で、大気に触れると紫に、その後紫褐色へという色の変化をするそうです。
大気に触れると色が変わる点ではウォールナットも同じで、緑→灰色→赤褐色と変化します。

写真では紫に見えませんが、実物も紫というよりは赤褐色。
なにより特徴的なのは色の均一性です。

5年くらい前だったか、宮崎椅子の工場で写真のスツールのデザインをされた小泉誠さん、BC工房の鈴木恵三さんにお目にかかる機会がありお茶をご一緒させて頂いた際の話で、
「パープルハートって奴は、切っても切ってもムラサキイモだ」。
と、鈴木さんが仰られたのを記憶しています。

その時には分からなかったのですが1年後パープルハートを始めて見たときの驚き、まさしくムラサキイモです。

2012年2月13日月曜日

円卓再塗装、続きです。

椅子とテーブルがセットの場合、塗色の関係でメーカーに修理を依頼するのですが、
なるたけ低予算で簡単にというお客様のご希望でしたので当店にて塗り替えしました。

二液型ウレタン樹脂を刷毛塗り。
納期に余裕がありましたので、乾燥時間の遅いタイプの塗料を使用しました。
他にもいろんな要素が絡んでくるのですが、理屈としては乾燥が遅ければ表面のレベルが整い易く、誰でも簡単に天板表面の平滑を得ることが出来ます。

少し塗色を濃くして材色のムラを隠してみました。
あと写真では見えませんが、わずかばかり下地の凸凹を拾ってしまった部分があって、大分気を付けたつもりでしたが反省点です。


2012年2月12日日曜日

グラムデザインの木村さんからPR用のリーフレットを頂きましたのでご紹介します。

木村さんのホームページはこちら。
http://gramdesign.biz/

特に「グラムデザイン業務日誌」は必見。
これまでに手掛けられた建築の設計から工事終了までを詳細にブログにアップされています。
私は現在から過去に遡って逆読みしてしまいましたが、時間にゆとりがあれば正順がお奨めです。

写真背後に写り込んでいるのは節ありホワイトオーク材、植物オイル仕上げのテーブルです。
製作後7年目の色合いとしては薄味ですがそれは写真のせい。
実物はとても良い感じに変わりつつあります。
この先が楽しみです。

直径90cmの丸テーブルです。材はたぶんラバーウッドの集成材。
表面の傷みが激しくなってきたため塗り直すことに。

以前、介護施設の入居者同士のコミュニケーションを円滑にする目的で丸いテーブルが導入されたことがあります。
円卓のよさのひとつは、卓を囲む人の位置関係の柔らかさにあるとのこと。
食事の際のお決まりの席、とかく固定化しやすい人間関係を改善するために、強制的に席移動させるのでなく、ひとつの卓を囲む人数を増減させることで自然に、あくまで自然にお決まりの位置を微妙にズレさせるのに円卓は非常に有効ですとお聞きしました。

例えば議事堂とかで議論が紛糾したときにはその場の全員で、せーのと角テーブルを丸テーブルに取替える場面とかを想像すると面白いですね。相手の立ち位置、自分の立ち位置があいまいになって、もしかすると新しいアイデアが生まれたりするかもしれません。






2012年2月10日金曜日

前回、途中止めになった本の紹介続けます。

Christine Mather、Sharon Woods 共著の「SANTA FE STYLE」。
頂き物です。
今回御紹介するにあたり、出版年を確認しようと思って、奥付を探したところそれに該当するページが見当たりません。ようやく見つけたのは1ページ目の裏。
洋書の奥付は普通そこにあるそうではじめて知りました。
1986年、ニューヨークの出版社から出されています。

内容は写真集といって良いでしょう。
キャプションが付いていますが、頂いてから20年読んだことがありません。読めません。
辞書と首っ引きで読んでみたいと思わないでもないですが、まずなにより豊富な写真の数が飽きさせません。それがすべてサンタフェスタイルのねた中のねた。
当店ではアンティークとかエスニック、カントリー家具の取り扱いをしておりませんので、自然その方面の関心は薄かったのですがこの本だけは別。
サンタフェ好きでもそうでなくてもお薦めです。
アマゾンにレビュー付で紹介されていますのでご参考にしてみてはいかがでしょう。

ちなみに写真に写り込んでいるのはブラックチェリー蜜蝋仕上げのテーブル。
製作半年後の色味です。

2012年2月9日木曜日

倉吉の荒井工務店さんの完成見学会の様子をアップします。
荒井さんのホームページはこちら。
http://www.arai-koumuten.jp

荒 井さんも前回ご紹介した藤原工務店さんと同じく、木組みを見せる伝統的な和風住宅を得意としておられるようですが、ご覧の通りのモダンカントリー。なには ともあれ施主さんのご要望を大切にするところから商売は始まるのですね。コーディネーターさんの努力の跡が随所に見られるお家でした。

写真奥の菱形の切り窓?はサンタフェスタイルの定番モチーフ。
ということで、サンタフェスタイルに関心のある方はこちらの本など如何でしょう。
(写真がうまく張りつけられないので次回アップします)

藤原建築工務店さん完成見学会、続きです。

家具はすべてウォールナットの無垢材でコーディネートしました。
シンプルな構成にすることで、重すぎず、軽すぎず、でしゃばりすぎず
落ち着いた感じのお部屋にすることが出来ました。

2012年2月8日水曜日

床材はチークです。
チーク材はミャンマー、インドネシア産の材ですでに伐採禁止令が出るほどの貴重材だそうです。
ネットで調べてみると用途の項に船舶造作、家具等とありますが、チークで作られた家具なんて
そう頻繁にお目にかかったことは正直ありません。知り合いの家具メーカーさんに聞くと何十年も前に購入した原木をいまだに大事に抱えてるとのこと。

ここ40年あまりの日本の家具製造の歴史というのは、一面、家具材料の変遷の歴史として見ることも出来ます。紫檀、花梨等の唐木の時代、チークの時代、ブナの時代、オーク、メープル等の北米材の時代、これらは決して直線的に並んでいるわけではないのですが、その時々の売れ筋の樹種というものがあって、残念なことに私はチーク全盛の時代を知らないのです。

ぜんぜん見ないというわけでもなく、古い時代の婚礼タンス、デンマーク製の食卓セットなど目に触れる機会はありましたが、年配の家具屋さんが「昔はいいチークがあったもんだ」などという言葉を実感できるほどではありません。

ということで、実物にお目にかかれない以上せめて知識だけでも、とネットに向かった次第。収穫はチークの和語宛を「油木」と書くそうで、これは先の話と違い大いに実感できました。

年月を経たチークの色味はえもいわれぬものがあり、それは木の中から表面へ滲み出す油分が関係しています。と言って肥え松のようなギトギトな印象は受けませんでした。湧出速度の違いでしょうか。もっと調べてみたいと思います。
ちなみにインドネシアではチークの植林が盛んで、ジャワチークとして有名だそうです。


いつもお世話になっている藤原建築工務店さんの完成見学会の様子をアップします。
藤原さんのホームページはこちら。
fujihara-hinoki.net/

藤原さんが手がける家の特長は昔ながらの本格的純和風住宅。
過去何回か完成見学会のお手伝いをさせていただきましたが、
当店の商品のラインナップでは、なかなかご要望にお応えし切れない
部分があって、不満足な結果に終わることが多かったのですが、
今回、洋風住宅ということもあって、わりと「ピタッ」と納めることが出来ました。


2012年2月6日月曜日

長さ2メートルのウォールナットの大テーブル。

当店の在所は田舎ですので、以前はこのサイズが良く売れました。
家を建てられる方の年齢が20代30代と下がるにつれ
食卓サイズは150cm前後、最初にセッティングする椅子は
2脚から4脚が大半です。

久しぶりにこのサイズを見たせいか、すごく大きく感じます。
合わせて3脚づつの対面セッティング。
お客様の狙いどうりに「形式的でありつつ、カジュアルの要素を」といった
雰囲気は出せたのではないかと思います。
形式云々はこの部屋がお寺の中のパブリックスペース、檀家さんや
来院のお坊様の談話室風なところから。

分厚い杉の床板の白にウォールナットの茶が軽快に絡んでいるところが
ミソなのですが写真では伝えきれなくて残念です。
大山の中腹、桝水高原のちょっと下にある別荘地です。
納品は昨年の晩秋。
窓外の雨にぬれた緑が、絵画のように美しかったのを覚えています。
この別荘地周辺は赤松の群生地で、密生しているせいかどうか
いずれもひょろっと細い幹が天に向かって直立している姿は
童話の世界の巨人のようでした。

今頃は雪に覆われているんでしょうね。