2012年4月28日土曜日


写真は「HIROSHIMAチェア」。デザイン深澤直人 製作マルニ木工。

深澤さんは以前ご紹介した原研哉さんと同じく「無印良品」のアドバイザーを務めておられます。
それぞれの出身が、原さんがグラフィック、深澤さんはプロダクトから、ということもあって深澤さんの方が「家具」に対してより深い関わりがあるようです。

で、この「HIROSHIMAチェア」当店に展示はありません。
見た目はよかったんですが、座り心地がいまひとつ。
決して座り心地が悪かったわけではありません。
むしろ良いと思う人もあるでしょう。
好みの問題です。
当店にいらっしゃるお客様の座り心地の感覚、好みに合わないんじゃないかな、と言う気がして導入に踏み切れませんでした。
座り心地の感覚というのは人それぞれとは言うものの、座面が板座の場合良い悪いがはっきりしやすく、それがまた「好み」に帰することだけに難しい。
当店のお客様は椅子の「見た目」と「座り心地」を同じレベルで重視されるので商品の選定にはどうしても慎重になります。

座面が板座の場合、フラットであることが一番座り心地が良いという説があります。
後傾させたら駄目。
座刳り(座面をたとえばお尻の形に掘り込むこと)ももちろん駄目。
床と平行にまっ平な座であることで、身体に負担のない姿勢を自分で探しやすい、自由度の高い座り心地を実現できると言う考え方です。
この説を知った時はなるほどと思いましたが実際はやはりどうしてもお尻が痛い。
痛くない姿勢を探し出すまでが大変でした。
けれどこの説を唱える人にとっては座り心地が良いのでしょう。
実際、当店で人気の宮崎椅子製作所「PEPEチェア」も座面はフラットでワイドです。
板座とクッション張りの違いはあるにしても。

当店にある板座の椅子でたくさんのお客様から支持を得ている座り心地の感覚というのは、以前もご紹介した「クレセントチェア」に代表される「ぽっこりはまり込む」感覚です。
ぽっこりはまり込む感覚というのは座面の形状や角度、大きさだけではたぶん実現できません。
背もたれとのバランスがとても大切だと感じています。
そのバランスが一体どういうものかについてはちょっとまだ頭の中が整理できていませんのでいずれまたご紹介します。




写真は節ありオーク材の別注食器棚です。
4年前に納品しました。
このたび同じ節ありオーク材で食卓のご注文を頂きましたので納品の際にこちらも一緒に撮らせてもらいました。
製作した当時は取っ手がちょっとうるさかったかなと思いましたが今見ると逆に手作り風な感じが出せて良かったです。
手作り風といえば扉にはめ込むガラス。
手作りガラスもしくはそれ風なものを探してガラス屋さん巡りをしていたのもこの頃です。
古い時代のガラスの建具が残っていると言う話を聞いて山奥の民家まで見に行ったこともありました。
結局、中に入れたものが見える「ぼんやり」の具合が手作り風ガラスでは見え過ぎる、ということで既製品のガラスをはめることになりましたが、それにしてもあの頃に仕入れたガラスの知識が今ではきれいさっぱり頭の中から飛んでいることにびっくりします。
ひとつ記憶に残っているのは、泡入りの外国製ガラスの雰囲気の良さと恐ろしく値段が高かったこと。あれを使ってくださるお客様の現れることを願ってます。



2012年4月26日木曜日

写真は食器棚の取っ手、つまみです。
30年以上お使いになられたそうで、つまみに埋め込んであるナットのところで割れていました。
使えさえすれば何でも良いとのことでしたが、あいにく手持ちのつまみに似たようなものがありませんでしたので作ってみることにしました。
向かって右側の白木のがそれです。
まだ作りかけですがふと思いついて写真をとっておきました。
これに限りませんが、仕事の最中にブログのネタに使えそうだから終わったら写真を撮っておこうと思って大抵忘れて、後で後悔しています。写真を撮っておくことも仕事のうちと習慣づけておかないと駄目ですね。

ターニング(ろくろ)作業はおもしろいとよくネットなんかで出ていますが本当ですね。
ターニングマシンとか持っていないので電動ドリルを使いました。
ちょっと危険なやり方なのでご紹介はできませんが、見る見るうちに形が出来上がるよろこびと言うんでしょうか、陶芸とかやったことありませんがなんかはまりそうな予感がします。
ちなみに写真のものは2個目。
1個目は調子に乗りすぎて削り過ぎてしまいました。

写真の背景はアメリカ広葉樹輸出協会お勧めの白太(辺材)まじりのブラックチェリー材。
当店に来てから5年目の色味です。
協会の説明では心材と辺材の色差はだんだん無くなっていくということでしたが、当店のものはむしろコントラストがはっきりしていくようです。


2012年4月18日水曜日


当店ではお客様に自然系の塗装をご提案しています。
自然系の塗装とは植物オイル、蜜蝋、柿渋、植物石鹸等を木の表面に沁み込ませる塗装です。
ウレタン等の石油化学系の塗料が塗装の過程でシンナーを必要とすることから起きる様々な弊害、たとえば塗装作業者の健康とか公害とかへの負担をより小さくするという点で、それらに対立する言葉として「自然系塗装」という言葉が使われ始めました。
ただ、今では健康や公害についてはノントルエン、ノンキシレンあるいは水性塗料という低公害の溶剤が使われていますし、逆に自然系塗料を謳った植物オイルの中に乾燥を早めるための劇物が混ぜられたりして、ちょっとわかりづらい状況になっています。
塗料がいったん硬化したウレタン仕上げは安全で、ご家庭でメンテナンスが必要なオイル仕上げは混ぜ物如何によっては逆に危険とも言えるかもしれません。
アトピー性皮膚炎でお困りの方などには塗料、接着剤、合板のデータをメーカーからお取り寄せしますのでお気軽に仰って下さい。

最近は自然系塗料についてのお客様の理解が進んだ様に思います。
オイル仕上げとウレタン仕上げの見た目の違い、メンテナンスの必要性の有無などご説明しなくとも解かってらっしゃるお客様が増えました。
住宅のフローリング、無塗装もしくは自然系塗料にされる方が割合多くなって来ているようです。
いずれにせよ木のナチュラルな風合いを好まれる傾向が強くなっているのでしょうね。

写真はオイル仕上げのウォールナットのテーブル、ご使用半年後の姿です。
メンテナンス前の写真をあえて載せてみました。
お部屋に対してちょっと大きかったようで、少し小さくして下さいとのご要望。
脚の位置を付け替えて、オイルを塗りなおし。
また新たなおつき合いが始まります。

天板端のシールは子供さんの定位置のしるしなのでしょうか。
食卓に向かわれるご家族の姿が垣間見えてなんかほのぼのとした気分になりました。




2012年4月12日木曜日

「クレセントチェア」続き。

ホワイトオーク材、デザイン佐々木敏光、飛騨産業、1995年。
写真は塗装前の白木の状態です。

佐々木さんがノリにのってる時期に発売されたこの椅子も 、もう16年のロングセラーになります。
発売後しばらくは前回写真の様に食卓とのセットで売れることが多かったのですが、最近はマイチェア感覚で、ご自分の為の一脚、ご家族の為の一脚といった購入例の方が増えてきました。
食卓セットは家のデザインスタイルに付随するのに対しマイチェアは流行とは無縁に選ばれることが多いです。
近年デザインの傾向として、より簡素なフォルムが好まれるせいか、この椅子の持つエレガントさがすこし鼻に付くようになってきたのかな、と思ってました。

「椅子展」というものをどんな切り口で見せるか、色んなやり方があると思いますが当店では「木の椅子」という、おおざっぱなくくりで始めてみました。おおざっぱなだけに少し捉えどころのない感想を持たれた方もいらっしゃるようですし、逆に自由な発想でお気に入りの椅子を選んで下さる方もありました。「スタイル」とか「売れ筋」だとかの縛りからなかなか自由になれない一家具屋としては胸のもやもやが晴れたような心地で、とても嬉しい「意外」でした。


2012年4月11日水曜日

「暮らしに寄り添う木の椅子展」では会場で簡単なアンケートを実施しました。

① 見た目の良い椅子
② 座り心地の良い椅子
③ 購入したいと思った椅子
④ 好きな木の種類
複数回答可としました。

結果は①、②、③とも上記写真の椅子、「クレセントアームチェア」に回答が集まりました。
理由はよくわかります。 ①、②、③の条件がすべて揃っているからです。
①はネットで「クレセントチェア」と検索をかけると「優美なライン」という言葉が多く見られます。フォルムを形容する言葉はまだまだたくさんありそうなところがすごいと思います。
②は絶妙な座刳りと腰を支える背もたれのバランス。プラス肘から指先までの触感。
人によって賛否はありますが、ぽっこりはまり込む座り心地という点では木の座面の椅子の中でも 絶品といって良いでしょう。
最後に③は写真では解かりづらいと思いますが、この椅子は非常に高い木工技術を駆使して作られています。そしてクラフトの要素を上手に機械加工に置き換えることで一品モノではない量産品としての価格を維持し続けています。
この椅子に人気が集まるのも納得です。

と言いたいところですが、実は意外でした。





「暮らしに寄り添う木の椅子展」終了しました。
たくさんの人にご来場頂きました。
お忙しい中、アンケートにご協力頂いたお客様、お時間取らせてすみませんでした。
椅子展終了後の昨日、アンケートの感想欄を読んでいてなにか胸に来るものがありました。
それは書かれた言葉の内に秘められた期待と励ましの声なんだと思います。
当店のような小さな商売はそんな人たちの思いに支えられているんだなと、改めて思いました。
本当にありがとうございます。
元気が出てきました。