2012年12月31日月曜日

今年一年お世話になりありがとうございました。
どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
年始の営業は3日から始めます。

2012年12月29日土曜日

前回ご紹介した「HIROSHIMA」チェアは、後傾の強い座りですので業務用としてはラウンジチェアタイプなのかもしれません。
食事後、席を変えてのコーヒー煙草アルコールを楽しむ為の、くつろいだ座り心地といった感じでしょうか。
写真の椅子は逆に食事の為のレストランチェアタイプ。
姿勢正しくナイフや箸を使うのに適した座りになっています。
このように椅子にはそれぞれ使用目的に合わせた座り心地があるべきだ、というのが一応の正論になっています。
が、世の常で正論通りに物事は進みません。
たとえばオールインワンということが昔から家庭用の椅子作りの悩みの種になっています。
食事をするのも、くつろぐのも、作業(勉強)するのも同じ一つの椅子で可能な座り心地というものが一つの到達点、理想だとする根強い要求となって椅子作りの方向を無用な迷路に落とし込む状況でしょうか。
日本の椅子メーカーは日々、あちら立てればこちら立たずの矛盾と向き合っています。
無用な迷路とは書きましたが、このことが予想外の良い効果を生み出すのかも知れません。
日本らしさですね。

向かって左側が張替後です。
けっこう硬い合成皮革でしたのでヒダを寄せるのが大変でした。

2012年12月27日木曜日

写真は「HIROSHIMA」チェア。
深澤直人さんデザイン。マルニ木工製作の人気商品です。
ネット上ではかなり以前から話題になっていましたが、そう何度も実物に触れる機会もなく、この度当店に入荷して初めて気がついたこともいろいろありました。
そのあたりのことなど少し書いてみたいと思います。

国内の景気が不振ということもあって、何年も前から海外市場へ向けた家具作りを試みてきたメーカーがあります。
最初から海外へ目を向けたデザイン。
こちらのHIROSHIMAチェアもそのように聞いています。
特にサイズの面で顕著ですね。
入荷して初めて気が付いたことなんですが、北欧のデザイナー、カイクリチャンセンさんの「NO.42」と並べてみると幅、高さ、背もたれの位置、大きさ、勾配、座面の角度、脚の転ばせ具合等、ほぼ同じと言っていいです。
HIROSHIMAチェア製作にあたって、同じく北欧の超有名作「Yチェア」に負けないデザインをとの意気込みから、かなり北欧の椅子を研究してきた様子がうかがえます。

N.42チェアについては前にご紹介したとおり座面高が少し高すぎるようで前脚をカットする云々のお話をしましたが、HIROSHIMAチェアも多少そんな感じです。
ただHIROSHIMAチェアの場合、その使われ方に店舗用があったりしますので高いヒールや靴を履いての座面高というのを想定しているのかもしれません。
それにしても「ソラマチ」の中でずらり並んでいるHIROSHIMAチェアはいい感じです。
たくさん並べた時のことをイメージしながらデザインしてあるんですね

2012年12月16日日曜日

写真は東亜林業(株)の食堂椅子。
背もたれの籐張りが破れ始めました。
食堂椅子の背もたれの籐が破れたときの修理は通常メーカーに依頼していますが、今回はご予算の関係で当店でやりました。
こういった感じの修理は割と多いです。
メーカーへ修理に出せばきちんと新品同様に直してくれますが往復の運賃を含めると結構な金額がかかります。
そこまでじゃなくていいから、ほどほどにというお客様の場合当店で対応させて頂いています。
籐張りの仕事は初めてでしたのでさすがに1脚目は手こずりましたが2脚目以降はコツがわかってスムーズに進めることが出来ました。
以下は備忘のために記しておきます。

古い籐張りを剥がす際、フレームに傷が入らないようにすること。
籐シートは普通、フレームに掘り込んだ溝に接着剤、または接着剤+タッカーで上から丸芯で押さえ込んであります。
今回の修理品は3脚中1脚だけタッカー留めがしてありました。
細い溝の底に堅く打ち込んである何本ものタッカーを抜くのは結構面倒でフレーム木部に傷が入りそうで怖かったです。
そう言えば東亜林業さんの古い時代の椅子は型が同型でもちょっとした仕様の違うことがよくあります。

溝幅、溝深に合った丸芯を選ぶこと。
今回、5mmの溝幅に4.5mmの丸芯を叩き込みましたが、少々きつかった様に思います。
すでに20年ちかくご使用になられた椅子ですので今後同じような修理があるかどうか分かりませんが、一応タッカーは使いませんでした。
籐材料屋さんのマニュアルにもタッカーは打つなとありました。
修理が楽に出来るというのは大切なことですが、固定する力の加減がまだよくわかってないので、きつめの太さの丸芯を選んだことは結果として良かったと思いました。

悩んだのが塗装。
同じく籐材料屋さんのマニュアルには塗装はするなと書かれていました。
塗装を施すと籐が脆くなるから、とのことですが、お客様がご使用になっている椅子6脚のうち3脚だけの修理ということもあって結局色あわせの塗装をしてしまいました。
塗装するしないでどの程度違いがでるか今の段階ではよくわかりません。

張替え後の写真を撮り忘れましたので後日、写してきます。
とりあえず材料の写真を。
カゴメ編み。編み目は1/2インチという種類。
未漂白ですので今後、飴色に色が変わっていくと思います。

2012年12月8日土曜日

写真はkitoki。
小泉誠さんデザインのWK06テーブルです。
前回ご紹介したのと同じものですが、天板の表情が判るように接写してみました。
クリームを塗り込めたようなしっとり感と自然な光沢が見えますでしょうか。
木の魅力を活かしたオイル塗装ならではの仕上がりだと思います。
こちらのテーブルを製作したのは広島県府中市の若葉家具さん。
婚礼家具で有名な府中のメーカーで古くからお世話になっています。
当時、府中の婚礼家具メーカーは、箱を作ることに関して自他共に認める精巧な技術を誇っていました。
タンスの引き出しを閉めると他の引き出しが出てくるっていうやつですね。
(閉まっている引き出しを開けると、他の開いている引き出しが閉まるという言い方のほうが正確ですが)
ただそれ以上に「府中家具」の名を高からしめたのは、家具の塗装技術だったということは一般の方はご存じないかもしれません。
各メーカーが競い合って独創的な色を生み出し、それぞれの会社名を冠した○○色と呼ばれていました。
そこには真似したくとも真似できない「秘中の秘」ふうな調色のエッセンスがあったんだと思います。
当時のオリジナリティ溢れる状況がそのまま現在まで受け継がれていたらどうなっていたんだろうと思います。
はかなくも婚礼産業の衰退とともにあの当時の熱気は消えてしまいましたが、逆に現在の多様化した「好み」に自然に寄り添うかたちでオリジナルなものへのこだわりは残っているのかもしれません。

2012年12月6日木曜日

小泉誠さんデザインのテーブルが入荷しました。
何年か前に試作の段階で見せてもらったときは天板と脚の接合に不安があったんですが、実際出来上がってきたのを見るとしっかり、がっちり。
デザイン優先なんて言わせませんって感じです。
なんせ薄暗い倉庫の隅っこで試作を見たのが間違いでした。
ごめんなさい。
写真のテーブルは節ありホワイトオークの天板にウォールナットの組合わせですが、そのほかアッシュ、ブラックチェリーでも作れます。
よかったら見に来てくださいね。
当店は「木の家具のお店」を看板に謳っているせいか、ご来店頂いているお客様も木味、木の風合いを大切にされる方が多いような気がします。
それも木目や色味をきれいに揃えたツキ板よりは、多少バラついたにしても無垢板のほうに「木」らしさを感じる傾向が強いように思います。
無垢の家具中心の品揃えをしている当店にとってはありがたいことです。
で、当店としては、無垢板の長所短所をお客様にご説明することになるのですが、無垢板の物的な性質とは別に、外観のデザイン上のポイント、木の見せ方的なものもあわせてお伝えする場合があります。
特に近年デザインの趨勢がシンプルモダンということもあって、無垢板の「重い」見栄えがデザインの妨げになるケースもあり、そうした時のディテールの処理の仕方なんかをお話させてもらっています。
例えば写真の4Dキャビネットは天板、側板、前扉、台輪、見えがかりの部分はすべてウォールナット材、20ミリ厚前後の無垢板で製作されています。
20ミリというのはさほど厚い材料というわけではないのですが、それでも木口=部材の厚みを見せないデザインにすることで、無垢板の持つ「重さ」を消し、かつ素材をよりシンプルに見せるという処理になっています。
素材をよりシンプルに見せる、というのは実は痛しかゆしで、素材の良し悪しが、もしくは好みがはっきりと出やすくこの辺りはちょっと難しいところかなと思います。
モダンさという点では、扉と扉の隙間を、木の動きを考慮しつつ最小限にとどめることで、ウォールナットの素材の連続性を感じさせること。
それから最下部の台輪を奥に引っ込めてキャビネット本体の浮遊感、「軽さ」を演出しているところ、なんかでしょうか。

こちらのお客様、別注品ではなく店頭に並んでいる商品をお買い上げ頂いたのですが、まるで誂えたかのようにぴったりと納まりました。


2012年11月29日木曜日

 バランスボールと言えば今では体幹を鍛えるためのエクササイズ用品として売られています。
我が家にも10年以上前にありました。
当時はこどものおもちゃみたいな感覚でしたが、スツールの代用として意外に大人に人気で、テレビを見るときなど取りあいになっていました。
特にスポーツ観戦用にもってこいですね。
負け試合のイライラを落ち着かせるのにあのボヨンボヨンとした座り心地は効果的です。
逆に集中を必要とする映画鑑賞などには不向きかもしれません。
当ブログではしばしば椅子の座り心地について書いていますので、バランスボールの座り心地を椅子に応用した例なんかをいつかご紹介してみたいと思います。

バランスボールの「スツール」としての欠点は、球状であるがために部屋の中を勝手にあっちこっち動き回ることです。
根がビニール風船みたいなものですので動いてもたいしたことは無いのですが、今の時期、寒い季節に石油ファンヒータの吹き出し口近くに転がると大変です。
数秒で破裂しました。

結構大きな音がしてびっくりしました。
石油ファンヒーターの吹き出し口はかなり高温になるらしく、やけどをしたっていうお話もちょくちょく聞きます。
気をつけておいたほうが良さそうですね。

写真は食器棚の扉。  
扉を開いたところにちょうどファンヒーターの吹き出し口があったそうで樹脂部分が溶けて痕がつきました。
なるべく手軽に修理を、とのご希望でしたので木目付きフローリング用補修テープを貼って上からスプレーで色あわせしてみました。

                                           

2012年11月19日月曜日

いつもお世話になっている倉吉の荒井工務店さんが今週末、完成見学会を開催されます。
場所は倉吉の米田というところです。
詳細は荒井工務店さんのホームページをご覧になって下さい。
先ほど確認しましたら既に告知チラシが掲載されていました。
チラシの右端にビーンズ型の食卓セットがチラッと写っているのが今回納入の品。
上の写真とは反対側からの構図になっています。
直線的な構成の室内に食卓のゆる~い曲線が微妙に効いてる写真になってるようですね。

こちらのお客様は節ありホワイトオーク材のテーブルに対して3社のメーカーのそれぞれ違う椅子をセレクトされました。
コーディネートのポイントは木味を揃えることと椅子の背もたれの高さをテーブルトップに合わせること。
木味についてはもちろんオーク材で揃えたのですが、各メーカーの使っている材料が北米産レッドオーク、ホワイトオーク、ロシア産ナラとバラバラだったこと、しかも無着色の植物オイル仕上げということもあって出来上がるまでとても不安でした。
背もたれの高さについては事前に店内でセッティングして、人の目線がテーブルに向かうことを確認済みだったのですが、実際にお部屋に入れてみると予想以上に効果があったように思います。
節ありオーク材のテーブルの強い個性が求心力になって、椅子のデザインの違い、木目の違いを目立たなく、まとまりのある組み合わせになりました。
後日、その辺りのところがもう少しよくわかる写真をご紹介したいと思います。

2012年11月17日土曜日

写真のカウンターと食器棚をご依頼されたお客様は、この秋にご新居が完成ということでそれに間に合わせるよう春頃からご相談がありました。
ですので実際に製作に掛かる前の打ち合わせ期間を3~4ヶ月取ることが出来ました。
ゆとりのあるスケジュールを組んで下さったおかげで、色んなアイディアを打ち合わせに盛り込むことが出来ましたし、割りとスムーズに進行したと思います。
スムーズに進んだ理由は、最初にご相談にいらっしゃった時点でお客様のイメージがクリアだったことに尽きます。
サイズを記入したスケッチをご持参頂いてましたが、その後の打ち合わせの過程で大きな変更はありませんでした。
打ち合わせの時間の大半をディテールに費やすことで、出来上がりのイメージの感覚をお客様との間で共有出来たかな、と思っています。

この項続きます。



2012年11月14日水曜日

宮崎椅子製作所+テーブル工房KIKIさん主催の「デザイナーの落し物展3」へ行ってきました。

前回の「落し物展」では一般のお客様の姿はあまり見かけなかったような気がしましたが今回は様変わり。
二日目のお昼前頃に到着したんですが、新作発表のプレゼンは三重、四重の人垣のうしろから聞くような感じでした。
宮崎椅子のブログを読んでいらっしゃる方ならお分かりだと思いますが、「宮崎椅子のおばあちゃん」がお友達のおばあちゃん達を引き連れて最前席の椅子にずらり並んでいる姿はとても可愛かったです。
大盛況で良かったですね。

新作については何点か興味の引くものがありました。
写真の椅子はそのひとつ。
小泉誠さんデザインのモダンウィンザーチェア。
宮崎椅子の担当モデラー職人は小石さん。
会場では小石さんにしっかりお話をお伺いできました。
後日、ご紹介したいと思います。


2012年11月13日火曜日

当店では別注家具のご相談も承っております。
別注といっても様々ですが、一番多いのは「箱」ですね。
たとえば写真のようなウォールナット材のカウンターと食器棚。
お客様の「こんなの作れないかな~」という問い合わせから始まったこの仕事。
ああでもない、こうでもない、
ああしよう、こうしよう、
いくつものアイディアを出しては潰し、見積もりを繰り返して、
お客様と当店、メーカーの二人三脚の作業が半年後、やっと形になりました。

過去、何度か別注の仕事を承りましたが、記録として残してきたのは図面だけ。
当時は写真に残しておくことさえしませんでした。
ちょっと反省の意味も込めて別注家具の打ち合わせがどんな風に進んでいくのか、
その様子を少しづつでもご紹介できたら良いな、と思っています。

この項続く。

2012年11月8日木曜日

お客様より苦情を頂いておりますホームページの更新が滞っている件について。

メーカー廃番、
展示が外れたもの、
新入荷等で、ホームページに掲載されている商品と
現在の当店の展示品にかなり違いが出ております。
ホームページの更新が滞っている関係で一部お客様にご迷惑お掛けしましたことお詫びいたします。

何とか来年には一新したいと努力していますので、それまでは新商品、新情報については随時こちらのブログでご紹介していきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。


2012年11月3日土曜日

前回、アイアンウッドと総称される木材についてご紹介しましたが、平素あまり馴染みの薄い木のせいか、書いていてどうにも手触りの無い感じがしました。
今回はさらに馴染みの無い、というか耳にしたことも無ければ目にしたことも無い木についてのご紹介になります。
 「砂漠の宝石 ~ デザートアイアンウッド ~ 」

アイアンウッドと言う単語をグーグル検索にかけるとトップに出てきたのが、「教えて!goo 家具インテリア」でした。
こちらに出ていた投稿で、カスタムナイフの柄の部分にデザートアイアンウッドという木が使われていることを初めて知りました。
カスタムナイフの柄は、デザートアイアンウッドの他には角、牙、骨、石、そして当然に木も使われていますが、スポルテッド(変色)とかバール(根杢)とかの色、杢、紋様の非常に強い個性の木が使われているようです。
その他には、万年筆、箸、小物等にも使われているようです。
高いファッション性があってちょっとマニアックな男の雑貨専用のマテリアル風な使われ方ですね。
デザートアイアンウッドには機能的な面もあって、狂わず痩せずナイフの柄にした時など半永久的にガタツキがこないそうです。
ごく、わずかな量しか市場に出回らない希少性があること。
色、杢、紋様の美的な価値が高いこと。
おそろしく高価なこと。
銘木といっていいでしょう。
(仮にこれが木と呼べるものなら。)
北米、メキシコの砂漠地帯あるいはその他の、砂の中に何年も埋もれたまま化石化した木の総称をデザートアイアンウッドと呼ぶらしいです。
日本でも水泥に埋もれた「神代木」というものがありますが、これは老齢の木という分類をされています。
湿潤な気候の山陰地方に住んでいる私には年を経た木材というのは、風化して脆くなるか腐れるかして消えて行くものという感覚がありました。
化石化した木、あるいは化石化しかけている木っていったいどんな手触りなんだろうと思います。
想像がつかない。

写真は飛騨産業「SEOTO」チェア。
納品前の、まだオイルを塗ってない白木の状態です。
材はホワイトオーク。
家具屋的日常のなかでは、それでも硬くて重い部類の木です。





2012年10月26日金曜日

当店が大変お世話になっている「よろい環境計画事務所」さんのオフィシャルブログをリンク欄に掲載しましたのでご紹介します。

基本、建築インテリア家具などのお話が中心ですが、時折はさまれるグルメ記事は必見。
知る人ぞ知る隠れた名店を、美しい写真と愛情たっぷりのコメントでご紹介されています。
これから家を建てようと思っている人も、そうでない人もぜひご覧になって下さい。

その萬井さんのブログで取り上げられていた「ピンカド」という木について初耳なのでちょっと調べてみました。
萬井さん設計の「西福原オフィス」の外装にコンクリートとのコンビネーションで使われている木です。
ブログでは別名アイアンウッドとも呼ばれると書いてありました。
「アイアンウッド」。
文字通り鉄の重さと硬さと耐久性を持った木の総称です。
「鉄刀木」、「セラガンバツ」は家具屋にも馴染み深い種類です。水に沈む木と教わりましたし、実際に手にして重さは体感しています。
フローリング、デッキ、歩道用材の「ウリン」、「イペ」、「ピンカド」は知りませんでしたが、「イペ」だけはホームセンターの木材売り場で手にしたことがあります。
「えっ、」と思うほど桁外れの重さです。
黒褐色の木色が日光と風雨にさらされて灰色に変わるPOPの写真が付けてありました。
都会のちょっとおしゃれな商店街の歩道を赤レンガから「イペ」に代えた様子の写真でしたが、灰色がとても街並みに馴染んでました。

次回も「アイアンウッド」について。
デザートアイアンウッド、砂漠に埋もれた木のお話です。
写真はヴェトナム。「イペ」の立木姿です。



2012年10月24日水曜日

写真はナガノインテリア工業(株)の食堂椅子。
27年前にご購入されたものです。
正確な数字を覚えてらっしゃるところに思い入れを感じます。
座面の張替えのご依頼でした。
大事に使われていたようで座面には汚れ一つありませんでしたが、膝裏が当たるところのクッションがヘタったせいで合成皮革の張り地が直接、台座の角に擦れて裂け目が出来ていました。
木部のフレームはさすがにところどころ色が剥げてましたが、色落ちの具合がアンティークな感じで良かったので、こちらは手をつけずにおきました。
あと、接合がゆるんでいたところがあって少しぐらぐらしていましたので締め直ししました。
締め直しはいったんバラして古い接着剤を落としてから再接合するのですが、場合によっては、ゆるんでない箇所までバラす必要があります。
かちかちに堅く締まった部分をバラすのは勇気がいります。
なんともなってないところをバラそうとして逆に壊してしまった昔の悪夢がよみがえります。
こんなときは思い切りが大事だと言われていますが、なかなか そのようにはいきませんね。


2012年10月23日火曜日

写真は節ありオーク材のチェスト。
もともとは左の黒い鉄枠フレームの上に乗っかっていました。
コンソールタイプのチェストですね。
今回はお客さまのご希望で、写真のようにバラして使用することに。
ナットを埋め込んだ24ミリ厚の節ありオーク材の天板をこしらえて、鉄フレームの上に載せて下からボルトで緊結します。
こちらはテレビ台としてお使いになるご予定ですが、ベンチでも良いぐらいの頑丈さでした
チェストはチェストとしてご使用になります。
チェストの底には以前ご紹介した台輪を同じく着脱可能な方法で取り付けました。
着脱式にしたのは将来、もともとの形に戻すことを想定してのことです。

オーク材は黄変し易くオイル仕上げに不向きとする見方もありますが、黄変して以降も年数を経ることでご覧のように深みのある色合いに変わる場合もあります。
こちらのチェストは当店で10年以上色の移り変わりを見続けてきました。
ようやく味わい深い木色になった頃にお買い上げ頂いたので、嬉しさの反面、ちょっと未練な気もしています。









2012年10月20日土曜日


前回のストラディバリウスのお話の中でちょっとだけご紹介したジェームズクレノフ氏。
現代最高のキャビネットメーカーと言われています。
その彼は一昔前、日本に来たことがあります。
信州かどっかで木工セミナー、最近の言葉で言えばワークショップが開催され、全国から多くのウッドワーカー達が集まりました。
そればかりという訳ではないでしょうが、日本のウッドワーカーにとっては「クレノフ」の名は尊敬と憧憬を込めて語られることが多いです。
うらやましいですね。
残念ながら私にとっては「クレノフ」の名はネット上の2次、3次の知識です。
リアルタイムな共感は持てませんが、ネット上では彼についての色々な情報を読んで楽しむことが出来ました。
ちょっと長いですがこちらの記事なんかが良さそうなのでご紹介しておきます。
ご興味のある方はどうぞ。

クレノフとくれば「サムマルーフ」について触れておかないわけにはいけません。
ともに日本のウッドワーカーにとっては匠(たくみ)あるいは師匠的な位置付けです。
二人とも活動の場がアメリカでした。
さすが木工先進国アメリカと言いたいところですが、このあたりのお話に首を突っ込むと長くなりそうなので止めておきます。

写真は長さ2.1メートルのオランダ製食卓。
20年位前にお求め頂いたものです。
このたびキッチンのリフォームを機に天板塗り直しのご依頼がありました。
メーカー送りせず当店での修理をご希望されましたので、せっせと古い塗膜を剥いでいるところ。
再塗装後の写真は後日アップしたいと思います。

2012年10月11日木曜日


最近「ヴァイオリン名器差し押さえ、再びドイツ税関で関税一億二千万円支払え」というニュースを読みました。
ドイツ在住のバイオリニスト、有希・マヌエラ・ヤンケさんが日本での演奏会を終え、帰国した9月28日にフランクフルト空港の税関に差し押さえられた、とのことです。
差し押さえられたヴァイオリンは日本音楽財団がヤンケさんに貸与したストラディバリウス。
ですので関税云々は言いがかりも同然なのですが、EU通貨危機の中でのピリピリした雰囲気が伝わってきます。
8月にはベルギー在住の堀米ゆず子さんも同じ目にあっています。
ヤンケさんも堀米さんも後日、無償で返却されたようですがとんだ災難ですね。
そのヤンケさんが日本で参加した演奏会が「ストラディバリウスコンサート2012」。
コンサートの模様はスタンディングオベーションが出る盛況ぶりだったそうです。

クラシック音楽にさほど関心がない私ですが、ストラディバリウスにまつわるニュースが続いたこともあって少し興味を覚えました。
ヴァイオリンの製作と言うのは歴とした木工の世界です。
それでいて楽器製作の世界、知識や情報というものに疎いままでした。
ちょこっと調べただけでそそられること、そそられること。
「ストラディバリウスの音色の秘密は特殊なニスにあるとされてきたが、そうでない事が実証された」
「18世紀当時の木工技術より楽器に対する科学的な研究の進んだ現代の方が優れている」
「ミクロン単位で実測して限りなく本物に近い寸法の複製を作る技術はあるが音色は再現不可能」
「木の経年変化が音色に与える影響とは何か」
「ストラディバリという人は木と対話する能力がずばぬけていた」

刺激的なタイトルが連なってしばらくハマリそうな予感です。
最後の「木と対話する能力」云々は家具の世界で言えばこの人
James Krenov。
腐朽菌の害で変色した木を表に使う斬新さ。
ユニークってこういうことを言うんでしょうね。

2012年10月6日土曜日



写真は宮崎椅子製作所「 hata 」チェアの笠木、背もたれ部分です。
材はウォールナット。
当店でこれまで購入して頂いた「 hata 」チェアはすべてブラックチェリー(展示もブラックチェリー)でしたのでウォールナットは初めて見ました。
いいですね。
造形に負けない質感、とでも言えばよいのでしょうか。
しっくりくる感じです。

木の色味とか木目をどう感じるかは個人的な主観、好みだと思います。
ウォールナット材の風合いを好む人の数が多いので、ウォールナットは市場の需給を通じて価格の高い材料となっていますが、例えばもっと明色の穏やかな木目を好むお客様にとっては、ウォールナットは価値の低いものとなります。
流行や価格が価値を決めるのではなく、一人の個人の心の中で価値が決まる。
とかく大量の情報が溢れかえるネット社会の中で、見失うことなく自分の「好み」と向き合えることはとても大切ですね。








2012年10月4日木曜日

写真は製作中の台輪。
台輪とは箱物の家具を一番下で支える大事なパーツです。
オーク材の端材から作りました。
これからオイルを塗るところです。

いつもお世話になっているお客様から依頼されました。
こちらのお客様とは一昨年ご自宅を新築されてからのおつきあいですが、木の家具が好きなだけでなく、センスや情報がとても豊富でいつもいろんなことを教えてもらっています。
今回もユニークな発想で、あるお買い物をして頂きました。
写真の台輪はこれに使います。
後日ご紹介したいと思います。



2012年10月3日水曜日

当店で扱っているブラックチェリー材の塗装はオイル仕上げか蜜ロウワックス仕上げの二通りです。
ご希望によってはウレタン塗装も可能ですが、選ばれる方は少ないです。
昨年は一件だけ、食卓を購入されたお客様がウレタン塗装を選択されました。
子供さんがまだ小さいから汚されるのが目に見えるという理由からでしたが、先々ではウレタンを剥いでオイル仕上げにしたいな、と仰ってました。
その節にはぜひお手伝いしたいと思います。

今年はまだウレタン塗装はありません。
それぐらいブラックチェリーという材料は木そのものの風合いが魅力ということなんでしょう。
その木味を生かすのがオイルや蜜ロウです。
当店が使っているオイルはリボス社のカルデットクリア。
蜜ロウは小川耕太郎百合子社のワックス入りのもの。
発色の良さでは蜜ロウ、塗りやすさということではオイルでしょうか。
白木地のときのほんのりピンクがかった木肌が濡れ色に変わる瞬間と言うのは、いつ見ても感動します。

写真は宮崎椅子製作所、ぺぺラウンジチェア。
ブラックチェリー材。
張り布は以前ご紹介しましたオイルレザー
写真の色味はRGBの数値で言えば「潤朱(うるみしゅ)」ですが実物は「柿色」に近い明るい感じです。
こちらの椅子はすでにお客様宅へお届けして店頭にはありませんが、同色のオイルレザーを張った他の椅子がありますので風合いはご覧頂けます。

2012年9月21日金曜日

前回ちょこっとご紹介した伯耆町の藤原建築工務店さんの完成見学会。
米子地区住宅展示場&ショウルームスタンプラリーに併せて明日22日、23日開催されます。
20日の日本海新聞の広告を見てましたらスタンプラリーの賞品はロボット掃除機、ニンテンドーゲーム機、USJペアチケット、その他いろいろだそうです。
スタンプが2つ集まれば「森のくまさん」の石窯で焼く出来立てパン、おいしそうですね。
よろしかったらお立ち寄り下さい。
場所は皆生温泉病院正門前です。
写真は1Fリビング。見せ場は2Fのバルコニーだそうですのでお見逃しなく。




2012年9月13日木曜日

最近、メーカーさんと話す機会があって聞いた話なのですが、市場に出る真樺(マカンバ)材の質が低下しているそうで、安定した材のグレードを維持しようと思ったら明色系の材料ではバーチ材のほうが具合が良いとのこと。
で、バーチ材の使い心地の感想を聞くと「とにかく堅い」んだそうです。
こちらのメーカーでは節有バーチは使ってないのですがそれでも刃物の切れ止みが早いらしい。
なかなか難儀な材料だと聞きました。

写真はバーチ材のデスクとキャビネット。
デスクの大きさは幅120センチ×奥行45センチ×高70センチ。
隣に置いたキャビネットは幅50センチ。
置き鏡は枠を含めて40センチ角です。
置き鏡の脚は取り外しが出来、壁掛けミラーとしてデスクの前の壁にも取り付け可能なんですが、残念ながらこちらのお宅は賃貸アパート。
うかつに釘は打てません。
どちらかと言えば壁掛けにしたほうがあっさりと納まりが良いのですが、ドレッサー代わりにこちらのデスクを使われるお客様は大抵、置き鏡としてご使用されます。
大きさの割りに軽いミラーですので、お化粧の際にはひょいと手元に引き寄せたほうが使い勝手が良い、ということをお聞きしました。

ところで最近のアパートの内装は個性的になっていますね。
うっすらと木目を残した白色塗料の拭き取り仕上げ(風?)の壁が、夏の陽ざしをとても柔らかなものに変えてとても素敵でした。
こちらのアパートはABCDと4棟ありましたので、それぞれが別の内装になってたら選ぶ方としては面白いかも、なんてお話ししましたが、これだけ供給過多の現状が続くと笑い話とばかり言ってられなくなるのかもしれませんね。




2012年9月12日水曜日

前回の続き。
節ありウォールナット材のTVボード、189センチ幅、窓開きタイプです。
こちらのお客様は窓開きタイプにするかどうかでかなり迷われました。
一応、頻繁にリモコンを使用されるご予定です。
サイズが前回写真のものより一回り大きい前扉ということもあって、開閉がより大変になるのをご心配されてました。
ソフトダウンステイという重量扉用の開閉補助金具が組み込んでありますが、それでも重いと感じる人には重い。
こういうご心配をされるお客様には窓なしタイプは不向きなようですね。
窓開きタイプをお勧めしました。

キャビネットタイプのTVボードの機能性は、AV機器その他の合理的な収納性能だと思います。
赤外線が通らない、リモコンが使えないなんてのは問題外でしょう。
それでもお客様が悩まれた理由は、「機能性」と相反する「風合い」のことがあると思います。
機能性と風合い。
あちら立てればこちら立たずのケース。
機能と風合いをより高いレベルで両立させる商品なら即、問題解決なのでしょうが、こちらの商品は問題解決にならない未完成なところが、逆に色々なことを考えさせられて面白さを感じさせます。


2012年9月7日金曜日

いつもお世話になっている伯耆町の藤原建築工務店さんが完成見学会を開催されます。
9月22日(土)、23日(日)。
場所は皆生です。
ハウスメーカー数社と組んでのスタンプラリー形式のイベントだそうですので、いずれ新聞等に告知広告が入ると思いますが、気になる方は藤原さんのホームページをチェックしてみて下さい。
場所の詳細が載せられると思います。(現時点ではまだ出てないようです )

写真は昨年暮れの完成見学会の際のもの。
正面に見えるのは節ありウォールナットのTVボード。
前面の無垢板のフラップ扉は赤外線を通しませんので、中にAV機器を収納する場合、リモコン操作は毎回扉を開ける必要があります。
面倒くさいと思われる方用に一部ガラス窓を開けたタイプもありますが、意外にもこちらの方が人気。
木が好きというお客様は不便をモノともしない。
おそるべし。
いや、ありがたし。

次回、窓開きタイプをご紹介したいと思います。


以前ご紹介した北海道民芸家具の真樺(マカバ)材の食卓。
再塗装後の写真です。
マカバ特有の斑(ふ)がたくさん出ていましたがこの写真ではわかりませんね。

斑(ふ)というのは柾目板の木目に対し直角方向に顕れる模様で樫やオーク材によく見受けられます。
虎の体側にある黒い線を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。
豪快な木味になりますが、今頃は逆に敬遠される場合もあります。

今、「斑(ふ)」と書きましたがマカバの場合、斑(ふ)とは言わないのかもしれません。
栃の木やメープル材にある「照り(てり)」のようにも見えます。
照り(てり)は波のように連続して光を反射する模様のことで、高級感があります。

斑(ふ)にしても照り(てり)にしても木の成長痕である年輪と違って繊維の並び方みたいなものですから顕れたり顕れなかったりします。
昔の人は顕れる方を良しとしてきました。
今はどうなんでしょう。

当店は木の家具のお店を看板にしています。
お客様の大半は木の家具の好きな方だと思います。
そういった中で、木の美的側面である杢や模様、色味の良し悪しを言うことに自制的な若いお客様が増えてきたのは確かです。
木そのものが少なくなっているという環境が大きく影響しているんだろうと想像します。
ただそれにも増して、木に対する感性が従来と変わりつつあるのかなという気はしています。
いろんなことを含めてそれは良い変化なんじゃないかと今のところは思っています。



2012年9月1日土曜日

写真はリビングダイニング兼用和風チェア。
高さを低めに設定したメープルの大テーブルにセッティングします。
こちらのチェアもメープルですがこれだけ塗りつぶすとほとんど分かりません。
向かって右が張替前、左が張替後です。
よくぞここまでご使用になられたか、っていうぐらいのボロボロぶりですが上から座布団でも置いとけば分かりません。
それに私自身、人のことを言えた義理ではありません。
張り布のボロボロぶりに反して、木枠のフレームはしっかりとしていましたので、張替さえしていけばまだまだこの先使えそうです。

仕事柄ホームセンターへ行く機会が多いのですが、最近のホームセンターのペット関連の売り場はすごいですね。
ドッグフード、キャットフードが山のように積まれているのはまだ分かります。
ペット用衣類や住居、健康関連グッズやビタミンサプリもなんとなく分かります。
ふくろうの餌になるひよこやマウスの冷凍品まで置いてあるのにはびっくりしました。
広くて深い。
世は挙げてペットブームだということは聞いてましたがここまでとは思いませんでした。

私はペットを飼ってないのでよくわからないのですが、犬が家具を齧って困ると言う話を聞いたりしますし、反面まったく齧ったりすることはないと言う方もおられます。新築のお部屋に犬と一緒にご入居される方は結構いらっしゃいます。
ちなみに写真の椅子のお客様のお部屋には、きれいな毛足の長い小型のワンちゃんが3匹いて吼えられまくりましたが、お話を聞くとどうも椅子とは関係ないようで、これなら直しがいがあるというものですね。



以前ちょっとご紹介した月刊誌「室内」。
今から6年ほど前に廃刊となりました。
写真は通算615号、2006年3月の最終号です。
半世紀に渡ってインテリアから建築まで幅広い情報と知識を提供し続けてくれました。
ネットの普及していない時代、これだけの内容を持った雑誌はちょっと他に無かったんじゃないでしょうか。
なかでも嬉しかったのが月間スケジュール。
国内外の有名無名のアーティストの個展からフランスベッドの展示即売会まで、全国で開かれるイベントの模様が一目でわかるようになってとても便利でした。
いや、実際そのイベントの数々に足を運んだことはありませんでしたので、見て楽しい予定表といった感じかもしれません。
廃刊は本当に残念です。
「室内」の編集兼発行人はもう亡くなられたコラムニスト山本夏彦さんです。
亡くなられて以降も数年続いたようですが上記の通り廃刊となりました。
廃刊となった理由はよくわかりません。

今ちょっと、正確には思い出せませんが山本夏彦さんはこのようなことを言っておられました。
私の目の黒いうちはこの雑誌は私のものだ、というようなことです。
個人で経営する出版社が発刊する個人色の強い雑誌、というふうに私は感じました。
個人商店である当店としては、ついそちらに受け取ってしまいました 。
違っているかもしれません。
実際、「室内」は法人格である株式会社工作社が発刊し、誌面も終わりの方の2ページ山本氏の文章「日常茶飯事」以外に夏彦色は感じられません。
年々、写真を多用したグラビア雑誌化し、タイトルも当たり障りのないこと他と変わりありません。
そういえば「室内」の実質的な編集長であった岡田紘史さんが辞められて以降、山本夏彦さんが陣頭に立たれた時期がありました。
巻頭特集のタイトルが「ハウスメーカーに騙されるな」。
久々に「室内」らしい記事に反響も大きかったようです。
「室内」らしさ、が夏彦らしさだとしたら副編集長の岡田さんも色々気苦労があったかな、と想像します。
文庫本の解説ページの収録をひたすら拒否していた山本夏彦さんでしたが、亡くなられてからの新版にはこの岡田さんが書かれた解説があるそうです。
興味深いですね。
岡田紘史さんは工作社在籍当時は家具業界の集まりなどで講演されることもありましたが、辞められてからは美大の先生になって本を書いたり、もっと別の集まりでの講演とか、縁遠くなってその名前もしばらく忘れていました。
最近ひょっと見た建築家のブログでお亡くなりになっていたことを知りました。
ちょっと懐かしくなってこの稿書きました。







2012年8月31日金曜日

前回のバーチ、カバ桜のお話の中で出てきた北海道民芸家具。
つづめて「北民」の愛称で知られるブランドは日本を代表する化学企業グループ(株)クラレのインテリア部門で生まれました。
たしか昭和38年ごろのスタートだったと記憶しておりますので、約半世紀の歴史になりますね。
3年前の2009年の9月、(株)クラレはインテリア部門の事業終了を発表しましたが、紆余曲折の末、現在では岐阜県高山市の(株)飛騨産業が引き継いで、元からの北海道工場で生産を継続しています。

写真はわかりづらくて申し訳ないですが北海道民芸家具の食卓です。
お客様宅で撮影させて頂きました。
もう15、6年ご使用になっておられます。
直径が165センチの大きな天板です。
小さなお子さんだったらテーブル中央に置かれた皿には手が届きません。
こんなときには、よく中華料理屋さんで見かける直径4、50センチぐらいの小さなターンテーブルを中央に置いたりしたこともありました。
で、この大テーブルに対して、俗にキャプテンチェアと呼ばれているゆったり大きめのアームチェアが8脚つきます。
プラス、ひ孫さん用のベビーチェアが1脚。
これだけで大家族のにぎやかな食事風景が想像できますね。

このたび天板の再塗装のご希望を承りました。
当店では修理できませんのでメーカーへ送ります。
この食卓は北海道の工場で作られた「北海道民芸家具」なのですが、椅子は飛騨高山の飛騨産業の製品です。
写真を見てお分かりのとおり、例の濃色の民芸色ではなく椅子の方の色に合わせた別注色です。
このことが幸いしました。
北海道へ送るのと、椅子メーカーのある飛騨高山へ送るのではかなり運賃が違ってきます。
にしても、メーカー修理というのは決して安くはありません。
安価な新品なら数台は買える金額です。
恐る恐るお客様にお見積りを提出したところ、意外にもすぐ即決。
ちょっとびっくりしました。
修理後の写真は後日ご紹介致します。

2012年8月23日木曜日

いつもお世話になっている倉吉の荒井工務店さんの完成見学会が週末に開催されますのでお知らせします。
8月25日(土)26日(日)、倉吉市の生田というところです。
詳細は荒井さんのホームページをご覧ください。
荒井工務店さんは以前ご紹介したことがありますが、どちらかと言えば今回のようにふんだんに木組みを見せるほうが荒井さんらしいですね。

上の写真は撮影のためにセッティングした家具です。
当日は村澤一晃さんデザインの食卓セットを持ち込む予定にしておりますので、興味のある方はご覧頂けたらと思います。

2012年8月18日土曜日

以前ご紹介したまま投げっ放しになっていた浜本工芸のソファ張替え後の写真です。
手前は2人掛けで、向こうにあるのは片肘1人掛けを並べたものです。
ブルー系の張り布がお好みだったようで、アームチェアも同じ張り布で張り替えました。
今の季節、とても爽快な印象ですね。

2012年8月17日金曜日


バーチ材続き。

色を冠した木の名前の由来というのは様々です。
例えばブラックチェリーは生じる果実の色。
アカマツは樹皮の色。
パープルハートは木を割った時の心材の色。
わかりやすいですね。
で、バーチ。
アメリカ北東部に産するのがイエローバーチ。
イエローは樹皮から来ているのですが、そのイエローバーチの木を割ったときの白い部分がホワイトバーチで赤い部分はレッドバーチとも呼ばれるそうです。こちらは材色に由来するタイプのネーミングですね。
 アルファベット表記の「WHITE BIRCH」は白樺(シラカバ)のことも意味しますので、ちょっとややこしいのですが、シラカバは家具材料として使われることはほとんどありませんのであまり間違いはありません。

イエローバーチは、日本でこれに相当するのが真樺(マカンバ)だと言われています。
ですので大雑把に言えば家具材料としてのバーチは、赤身を基本除くと、イエローバーチ=ホワイトバーチ(白身)=マカンバという感じでイメージされています。
ふつう真樺(マカンバ)は樺桜(カバザクラ)の名称のほうで知られています。
カバザクラの名称のせいでサクラの一種と勘違いされることがありますがサクラではありません。
有名なところでは北海道民芸家具に使われている材料です。
塗料の吸い込みムラを利用した濃色の着色が特徴ですがマカンバは白くてとても堅い木です。
北海道民芸家具は硬質な材料を気品のあるデザインで仕立てた美しい家具ですね。

当店では北海道産の白樺を無着色のままオイル仕上げした学習机を展示していますが、マカンバと比較するとかなり柔らかい印象です。まあ、その柔らかさがナチュラル感を醸し出しているのかもしれませんが。

写真はバーチ材のチェスト。
ぼんやりとした木目と均質な色合いの中でワンポイントのウォールナットの「契り」が効いています。
前回ご紹介したデスクともども最近人気の樹種ですね。




2012年8月16日木曜日

写真はバーチ材のデスク。
奥行きは45センチで長さは170センチの細長い天板です。
写真では見えてませんが引き出しが3杯ついてます。
セッティングする椅子は35センチ角の布張り回転スツール。
脚部はメープル材ですがバーチ材との相性は悪くありません。
3脚並べていますので、子供さんが3人並んで夏休みの宿題に向かうのにもってこいの大きさ感でした。
こちらの窓は南に面しているようでお母さんは焼けの心配をされていましたが、午前中の光あふれる中で見るバーチ材の白さと言うのは格別なものがありました。机に向かう子供さんの記憶の片隅にでも残ってくれると嬉しいですね。

バーチ材をご紹介するのは多分初めてだと思うので次回、材料としてのバーチのお話を。

2012年8月6日月曜日

写真は飛騨産業「AZAMI」チェア。
こちらの商品の特徴は以前ご紹介したことがありますので、ここでは張り布について。

張り布の選択は悩ましくも楽しい作業、と前に書きましたが、お客様とお話しする中で最近の売れ筋だとか傾向といったようなことをお話させて頂くことがたまにあります。
これ自体はお客様の「悩ましくも楽しい作業」に水をさすようなもので、アドバイスでも何でもないです。
お客様がご自身の選択に99パーセントの決心と1パーセントの不安を感じていらっしゃるような場合の背中の一押しみたいなものですね。
例えば赤系の張り布を選ぶお客様に、最近の傾向として赤系を選ばれるお客様が多くなっていますよ、の一言が不安を和らげる、かもしれませんしそうでない場合もあるでしょう。
そうでない場合は要らざる一言になりかねませんのでやっぱりその辺は慎重にしたいですね。


以前、お店の展示がブラウン系1色になった時期がありました。
どちらかと言えば無難な配色に落ち着くお客様が多かったせいもあり、お店として全体のバランスへの配慮を欠いていた為もあります。
最近の傾向を言えばやはり赤系の張り布を選択されるお客様が増えている印象です。
赤系の張り布の生地や柄が良くなったせいなのか、赤系を好むお客様が増えてきた為なのかは今のところちょっとよくわかりません。


2012年8月5日日曜日


ナラ材のTVボードが入荷しました。
サイズは180センチ幅。
見えがかりはすべてムクのナラ材。
内装はツキ板です。
向かって左が引出しで、右はAV機器用のオープンスペースになっています。
AV機器のリモコン操作は前扉をスライドさせて行うことになりますが、これが面倒な場合、扉を開けっ放しでも格好が悪くならないところがこちらの商品のデザイン上のポイントです。
シンプルモダンな木の家具というコンセプト通りの商品ですね。

写真はコスガのアームチェア。張替え後の写真です。
張り替える前の張り布は鹿とバラのサンダーソン柄だったのですが、ソファの張替えも同時にご注文頂いてました関係上、ソファの柄に合わせることになりました。
ちなみに張替え前の写真はこちら。

もともとオリジナルの方は、クラシックスタイル風に座面中央が盛り上がるクッションの詰め方がしてあったんだろうと思いますが、今回はクッション材をフラットに載せて包んでみました。
伸縮性のない張り布でしたので使いくたびれた感じが出ないよう、少し硬めの詰め物を入れてギリギリまでテンションをかけて張り込みました。
お客様のご希望通り、座ったときのお尻の沈みの少ないかっちりとした座り心地になりましたが、これが長年使ってもへたりの少ない長持ちするやり方かどうかまでは正直よくわかりません。

ウレタンフォームと言う画期的な素材が家具に使われ始めて約半世紀。椅子やソファのクッション材としてあまりにも優れていた為に、あまりにも長く頼りすぎた、という反省の声が業界内で何年も前からありました。その時には聞き流していたのですが、こういったことも含めてこれから色々とウレタンについて勉強していきたいと思います。



2012年7月25日水曜日

前回机の下にアームチェアの肘先を潜らせるための椅子脚カットのお話をしましたが、今回はお客様の体形に合わせるための脚カットのご紹介です。
写真は「NO42」チェア。
カイクリスチャンセンの有名作品ですね。
今では日本の宮崎椅子製作所で作られています。
既に北欧での生産は行われていないと聞いていますので、市場に出回っている大半はユーズド品だと思われます。
ユーズド品の良さはオリジナリティと使ってある張り布でしょうか。古くなった感もいいです。

ユーズド品と宮崎椅子製の違いはちょっと専門的なお話になりますが、前脚の接合部分の胴つき面積を大きくして強度を増したこと。
座のクッションを支えるウェビングテープをダイメトロールに換えて耐久性を増したこと。
壊れ易かった背もたれの可変金具を改良したこと。
私が聞いているのはこの3点ですが他にもあるかもしれません。
各部デザイン、寸法はオリジナルを尊重しているということです。
そう、北欧人の体格に合わせたシートハイ(座高)46センチ。

こちらのお客様は女性で小柄な方だったので奥様用の分だけ脚カットというお話になりました。
かかとがしっかり床面に付くぐらいとのご希望でしたので採寸したところ今まで経験の無いくらいの長さをカットする予定になりちょっと焦ってしまいました。
考えてみれば当たり前の話で、通常、日本人に合わせた既製品の椅子のシートハイは40から42センチ。小柄な方、ご年配の方のためには38センチと言われています。無論、座面の素材、座面の傾き、座面の奥行きによって変わってきますので一概には言えませんが、大雑把には上記の寸法が各メーカーの標準となっています。
体形に合わせるという点では5センチくらい切ってもよいでしょう。
念の為「NO42」チェアの脚カット長さの例をネットで調べてみました。
後脚より少し前脚のほうを大きく切るところが多いようです。
それでも5センチという例は見つけられませんでした。

恐る恐る小刻みに前後の脚を切っては、座り心地とシルエットを検討しながら結局は前脚5センチ後脚4センチまで切り進めました。
お客様にご満足頂けたのがなによりです。




前回ご紹介した机と椅子の置き場所は実はこのようなところです。
奥様専用のパソコンデスクといえば、書斎やリビングよりダイニングスペースのほうが何かと便利なんでしょうね。
パソコンデスクやワーキングデスクの最近の売れ筋はホテルデスクタイプの奥行きが45センチのものが主流になっていますが、こちらのお客様はお仕事の関係上広いデスクトップを必要とされていましたのでスタンダードな形になりました。
椅子の背後、ちょうど写真が切れるあたりには食卓が迫っており、通路確保のためには机下に椅子の肘を入り込ませる必要があるかもしれません。
肘先から3分の1ぐらいは入りましたが更に椅子を押し込むためには1センチぐらい脚をカットしないといけません。まあその辺は使ってみてから、ということで今は様子見です。
写真はブラックウォールナットの机にブラックチェリーの椅子の組み合わせ。
ご購入頂いたお客様は最初にこちらの椅子に一目惚れ。
合わせる机も、チェリーで揃えるのかと思っていたところウォールナットを選択されました。
着色しない自然なままの木の色と言うのは、木の種類を違えてもさほど違和感はないと思いますが、この写真の写りではそうとも言えませんね。

ウォールナットの黒は年月とともに色抜けして赤が強くなっていきます。チェリーの赤は色味が増して黒が強くなっていきます。木目や風合いを別にすれば色調はすごく似通ってきますので先楽しみがあるでしょうねとお話ししたら笑っておられました。

2012年7月3日火曜日

「HOLLY1PLAIN」の布地を張った商品のご紹介を続けてきましたが、あの写真ではよくわからないとのご指摘を頂きましたので、今回は引いて撮ってみました。
どうでしょう。
せめて雰囲気だけでも伝わったでしょうか。
当店の古ぼけたディスプレイで見る限り、さらによくわからなくなっているようです。
引きの写真で柄や杢目の具合まで鮮明に写ったらいいんですが、その辺りはご勘弁ください。

写真は納品先のお客様宅の玄関。
ナチュラルかつシンプル。
手狭なようにみえて、なにかほっとする大きさ感。
とても居心地の良さを感じました。

2012年6月28日木曜日

「HOLLY1PLAIN」続きの続き。

写真はウォールナット材 × HOLLY1PLAINの06色。
フレームタイプは「HAKU]。新商品ですね。
ディテールの隅々まで気を使ってあるところに好感が持てる椅子です。
張り布は黒。
前回、前々回の写真と違ってほぼ実物どおりに写ってます。

椅子のフレームのタイプ、型を選び、木の種類を選び、張り布を選ぶというのは結構大変な労力だろうと思います。
1時間、2時間悩まれるのはざらです。
店頭で決めかねる場合には実物があれば実物を、無ければ木片と張り布のサンプルをお客様のお部屋において頂いています。
こうやって悩んで、楽しんで決断した組み合わせが実際に椅子の形になって出来上がるのが3ヵ月後。
私どもにとっても今まで知らなかった組み合わせはとても新鮮で、大切な経験、糧になります。
というか、本来ならお店の側がお客様にアドバイスを差し上げる立場なのでしょうが、むしろ逆にお客様のセンスに教えられることの方が多いようです。

次回へ。



「HOLLY1PLAIN」続き。

写真はブラックチェリー材 × HOLLY1PLAINの04色。
フレームタイプはぺぺアームチェア。
個人的にはこの組み合わせが一番気に入っています。

店頭に並んでない組み合わせの場合、木片と張り布のサンプルで出来上がりを想像して頂く、ということを前回書きました。
無いものを想像してもらうのはむずかしいですね。
お客様と私どもが感覚を共有できているな、と感じられるときは、わりと簡単に「これ、いいね」って感じでどんどん前に進んでいけます。
そうでないときは、イメージを言葉でやりとりすることになります。
そんなときいつも思うことは、どれくらいお客様に伝えることが出来たんだろうかなっていうことです。
華麗で多彩な表現が必ずしも相手に伝わるとは思いませんが、「感覚」を言葉で表現することのむずかしさにはいつも悩まされます。

次回へ。




宮崎椅子製作所の新しい張り布「HOLLY1PLAIN」を使った商品がいくつか入荷していますので順次ご紹介したいと思います。
写真はメープル材 × HOLLY1PLAINの02色。
フレームタイプはぺぺラウンジです。
グレイと言うより黒に近く写ってますね。
実物はドットの色合いがもっと淡い灰色でメープル材とのコントラストはもっと柔らかな感じでした。

お客様が商品を選ぶ際、木の種類を選び張り布を選ぶ、と言う商品があります。
場合によっては塗装色を選ぶ商品もあります。
例えば宮崎椅子では木の種類が8種類、合わせる張り布の種類が50種類近く。
組み合わせの数は400通りになります。
400通りすべてを店頭に揃えられたら良いのですが当店の力では無理。
店頭にないものは木片と布のサンプルを手にして、出来上がりのイメージを想像して頂いてます。
お客様にとっても私どもにとっても、とても悩ましく、楽しい時間です。

次回へ。



2012年6月24日日曜日

納品前のオイル塗りの様子です。
塗った直後なのでツヤが見えていますが、これから拭き取りして数日乾燥させれば落ち着いた木味に変わっていく予定です。
納品日が迫ってますのでそれまでに完全乾燥させたいところですが、この梅雨模様ではちょっと心配です。

オイル塗装の乾燥のしくみというのは、オイルの分子が空気中の酸素と結合して酸化するところから始まり、それからゆっくりと分子同士が酸素を間にはさんで引っ付くことで固化=乾燥するというもの。これを難しい言葉で「重合」と言うんだそうですが、要は酸素が大事ということです。
ですから表面は酸素がいっぱいあるんで早く固まりますが、油膜の下の方の部分は酸素が届きにくいので乾燥が遅い。時間差があるということです。したがって厚塗り禁物です。

オイル塗装の利点の一つが、ご家庭でお客様ご自身でメンテナンスできる点です。やり方もいたって簡単なんですが一つ注意点がありまして、塗ることより拭き取ることの方に意識の重点を置いて下さいということです。塗り=1、拭き取り=9の割合ですね。
オイル塗装を選択されるお客様というのは家具に愛情を注がれる方です。木味の良さを解かっているがゆえに、つい塗り過ぎていつまでもベタつくということを聞いたことがあります。売る側の人間としてはとてもありがたいお話なのですが、そこのところちょっとだけ「乾燥のしくみ」を頭の隅においてお手入れして下さればありがたく思います。

この食卓の天板は一つ一つ大きさの違うウォールナットのブロックをモザイク状にジョイントすることで一種のグラデーション効果を意図したものです。なかに写真右端のようにおおきく白太がかんでいることもありますが、これも材料の有効利用+面白さという感じで見てください。

2012年6月20日水曜日

写真は「BOSSチェア」。
もともと「OYAJI(おやじ)チェア」という名前だったはずですが、いつのまにか「BOSS(ボス)チェア」に変わってました。
商品名が途中で変更されると言うようなことは、そう滅多にあることではありません 。
そこに、製造メーカーの柏木工の思いみたいなものを感じます。
発売以降、「おやじ」だけでなくいろんな人たちに受け入れられたこと。
現実に可能性が広がっているのに当初のコンセプトに縛られる必要はありません。
当店の展示だって写真の通り、脱おやじ仕様。
改名歓迎です。
長く育ててゆければいいですね。

あぐらのかける椅子というとクラフト感たっぷりの荒削りなイメージがあります。
「頑固チェア」なんてネーミングのすごく大ぶりの椅子もありました。
こちらの「BOSSチェア」はあぐらのかける大きさを持ちながらコンパクトに見せるデザインがミソですね。
お部屋の中での収まりが意外に良さそうです。



2012年6月14日木曜日


写真は宮崎椅子の張り布サンプル。この春入荷の新柄「HOLLY1PLAIN」。
最近こちらの張り布が人気です。
人気の理由はユーズド感かな?。
ちょっと使い込んだ風合いに見えるところがナチュラルな雰囲気を好むお客様に好評を得ているようです。
レーヨン繊維の光沢をゴージャス系でなくレトロな味に仕立てているところがミソかもしれません。
素材の構成は麻54%、レーヨン35%、綿8%、ナイロン3%。
まずは、この数字だけで手ざわりを想像してみてください。
麻の驚くほど意外な「しなやかさ」とレーヨンの「なめらかさ」の混じり合う感触はとても優しく、どこか懐かしい感じがして、それでいて斬新。
そう斬新なのです。椅子生地としては。
これは私が知らないだけのことかもしれませんが、レーヨンの滑らかさや光沢を生かす為の素材の組み合わせはアクリルやポリエステル繊維が大半で、レーヨン+自然素材の組み合わせは正直初めてみました。
実はサンプルが入荷した当初は思わなかったのですが、お客様の「これ良いよ」の声が結構多くなってからやっと気が付いた次第です。

椅子生地にレーヨンが使われる割合は昔はいざ知らず、今では少なくなっているようです。椅子生地の機能性を考えれば、レーヨンに代わる新たな化繊の方が使い便利が良いということなんでしょうか。






2012年6月9日土曜日

写真は東亜林業(株)の「3号椅子」。
古い家具屋さんならピンと来るネーミングですね。
グリーンの合成皮革の方がオリジナルで、オレンジの布張りはこの度張り替えたものです。
東亜林業のホームページを見るとこの椅子は、昭和40年代の大ヒット商品だそうです。
ということは、もしかしたら40年近く経っている可能性もあるわけですがその割に木部も張地もほとんど傷んでいない良好な状態でした。
この「3号椅子」はモダンなシルエットを出す為に背も座もごく薄いクッション材しか使っていません。したがってさほど座り心地が良いということにはなりませんが、おかげで「へたり」が少ない。
40年経っても製造当時そのままの「かっちり」とした見た目でした。
張り素材の合成皮革が伸縮性のほとんどないタイプだったことも影響しているんでしょう。
薄くて硬めのクッション、伸縮しない合皮、それをぱっつんぱっつんに張り込んだ座面の座り心地というのはちょっとプラスティックな印象で、この当時のモダン感覚を表現するのにふさわしいやり方だったのかもしれません。
ちなみにこの「3号椅子」、現在「サンディ」と言う名前でリプロダクトされています。