2014年9月17日水曜日


テレビボードの中に収納したAV機器を外からリモコンで操作するには、ガラスやアクリルなどの赤外線を透す素材を扉部分に使うことが一般的なやり方です。
テレビボードの場合、前面のかなりの面積を異素材が占めることになるので、木の家具らしさを演出するにはちょっと不都合でした。
最近では、同素材の木を使ったルーバーや細いスリットのデザインを扉に施すことで、その解決策とした例も見受けられます。
写真はウォールナットの無垢材のテレビボードですが、真ん中のフラップ扉のガラスに同素材のウォールナットの突き板=木を薄く削いだものを貼ることで、赤外線を透しながら、木の家具らしい雰囲気を壊すことの無いデザインになっています。
写真では突き板の部分が色が薄く見えているようですが、少し壁から離して置いたせいで、もしかしたら裏面の配線孔から入った光が透けて見えているのかもしれません。
機器とテレビの配線が終わって壁に戻せば光が入らなくなって色の薄さは解消するでしょう。

この商品に限っていえば突き板部分の杢目の流れ、色合い、塗膜がとても良い出来あがりで、無垢板の部分と良く調和していました。
光が透けるくらい薄い厚みの木片を、無垢の木の板と違和感なく隣り合わせに出来るテクニックがあるとデザインの幅は結構広がりそうです。
実際、この赤外線透過突き板はあっという間に全国の家具メーカーに広まりましたし、家の造り付けにもよく使われています。
気になるのは経年変化によって突き板の風合いがどんなふうに変わっていくのか、ですね。


2014年9月10日水曜日


先日、子供の国語のテストを見てたら、井原俊一という人の「日本の美林」という文の抜粋が載っていました。
森は資源なのか、それとも環境なのか?
とかく両極に振れがちな森林の現況を、森林ジャーナリストである著者が日本の美林を訪ね歩き、森林再生のヒントを取材した内容のようです。
調べてみたら初版は1997年で、時事的にはちょっと古いんですが、まことに中学生にふさわしいテーマで、これを読むことで少しでも木への興味が湧いてくれるとうれしいですね。

写真は節あり杉材のフローリングとウォールナットの食卓セットの組み合わせ。
壁も節ありのように写ってますが、これは腰壁ですので半分までです。
節がたくさんあっても、杉の場合おとなしいですね。
親戚の家がリフォームした際、天井をのぞいて壁の四周、床すべて節ありパイン材にしました。
最初は目がちらちらするようなにぎやかさでしたが、10年たった今でも変わりないように感じます。
木は古びてくると落ち着いた色合いに変わると言いますが、節ありパインの場合、木が黄変することで,節とその他の部分の色相の対比がいっそう強くなる感じがします。
ただ何年来とそこに住まいしてると耐性がつくようで、「もう慣れましたよ」と言っていました。
住めばみやこ、というのとはちょっと違いますが、人が暮らすということは地に足がつくようにしっかり、たくましいものですね。

2014年9月3日水曜日

お知らせです。

お世話になっています倉吉市の荒井工務店さんが完成見学会を開催されます。
9月6日(土)、7日(日)。
場所は倉吉市の上井です。
詳しくは荒井工務店さんのホームページをご覧になってください。

www.arai-koumuten.jp

木の香りがふんだんに漂う「木のお家」に、飛騨高山の無垢の木の家具の組み合わせ。
木と木で、ちょっと無骨になりそうなところを、優しく洗練された雰囲気に変えているのは、倉吉から米子まで何度も脚をはこんで下さったお客様のこだわりとセンスの良さでしょうか。
お時間のある方は見に行かれてはいかがでしょう。

2014年8月22日金曜日

写真はホワイトオーク材の食卓天板です。
前回アップした写真よりは色、杢の感じがお分かり頂けるかと思います。
塗装は大谷塗料さんのバトンクリア。
バトンは植物系オイルですが、蜜ロウに比べると少し光沢が出るようです。
汚れにくさはバトンのほうが強そうに思えます。
ただし取り扱いとかメンテナンスの容易さは蜜ロウが勝っています。
一長一短といったところでしょうか。

前回のソファと同じく、こちらも見えがかりに節あり材を使っています。
今でこそ節あり材の特有な表情、自然な木らしさを面白がって下さるようになりましたが、以前はこんな使い方をすると安手に見られました。
若いお客様が節あり家具を気に入って買って下さって、いざ配達するとお家のご老人が「なんだ、この安もんは!」とか言われたことがあります。
20年くらい前のお話ですが、日本人の無節信仰という木に対する感性がまだ残っていたころですね。

日本人の木に対する感性ということで言えば、こんなお話もあります。
一本の木には立木のとき、太陽の光をいっぱいに浴びる南東側の面があります。
南東側の面を「日面(ひおもて)」と言い、反対の北東面を「日裏(ひうら)」と言います。
自然、枝葉は日面側に多く、節も多く残ります。
飛鳥時代の工匠たちは木が自然に生えていた時と同じ状態に、柱の日面は南向きに建てることが、木を生かし建物を長持ちさせると考えました。
ところが古代建築の正門は中国の影響かどうか南を向いて造られています。
柱の日面を南面させると建物の正面玄関側は節のある材を使った荒い印象の見栄えになります。
飛鳥人はそれでも良いと考えました。
無節信仰の以前にはこういった感性もあったのです。
以上は法隆寺をはじめたくさんの飛鳥時代の伽藍の修復、復興にたずさわった宮大工の西岡常一さんがかつてお話されていたことです。
私としてはいつ頃それが変わっていったのかということに興味を覚えます。
いつか調べてみたいですね。






2014年8月21日木曜日

写真は最近入荷したデイベッドソファです。
ソファベッドと違うところは、背もたれを倒すなどの余分な動作をせず、すぐそのまま寝られることでしょうか。
長さ180センチ幅75センチのフラットで少し固めの座面は、うたた寝するのに最適です。
汗が気になる方のために座面下には、シーツやパッドを収納できるスペースも嬉しいところですね。
とは言っても当店ではどちらかと言えばソファの要素を重視して導入を決めました。
これにかぎらないんですが、よくよく眺めているうちにこのソファの置かれているお部屋のイメージがだんだんはっきりしてきました。
するとソファに並んで座っているご家族のお顔までが眼に浮かぶようになってきます。
こういう時は売れます。(売れないことも結構あるんであてにならない)
それからまだちょっとうまく説明できないんですが、「見たことありそうで、無い」デザインに思えます。
ちょっと不思議な感じを受けました。
デザインは小泉誠さん。
小泉さんのデザインは個人的には、最初はよくわかんないけど、後からじわじわ良さが分かってきて、いつの間にか小泉ワールドに嵌っていくというパターンですね。
ディテールの隅々にまで細やかな気を使っていながらそれを感じさせないところがすごい。
フレーム材はホワイトオーク。
太くて濃い木目が豪快ですね。
最近の家具では同じブナ科のレッドオーク材もよく使われています。
着色前なら見分けがつき易いのですが、家具屋の店頭に並んでいる状態では違いが分かりづらいかもしれません。
ちなみに洋樽の材料はホワイトオークのほう。
レッドオークでは駄目だそうです。
木の成長が止まると水の通り道の導管が塞がれますが、ホワイトオーク材の導管の塞がり具合とわずかな木の呼吸が洋酒の味わいに絶妙に影響しているとのこと。
微妙なものですね。