2012年12月31日月曜日

今年一年お世話になりありがとうございました。
どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
年始の営業は3日から始めます。

2012年12月29日土曜日

前回ご紹介した「HIROSHIMA」チェアは、後傾の強い座りですので業務用としてはラウンジチェアタイプなのかもしれません。
食事後、席を変えてのコーヒー煙草アルコールを楽しむ為の、くつろいだ座り心地といった感じでしょうか。
写真の椅子は逆に食事の為のレストランチェアタイプ。
姿勢正しくナイフや箸を使うのに適した座りになっています。
このように椅子にはそれぞれ使用目的に合わせた座り心地があるべきだ、というのが一応の正論になっています。
が、世の常で正論通りに物事は進みません。
たとえばオールインワンということが昔から家庭用の椅子作りの悩みの種になっています。
食事をするのも、くつろぐのも、作業(勉強)するのも同じ一つの椅子で可能な座り心地というものが一つの到達点、理想だとする根強い要求となって椅子作りの方向を無用な迷路に落とし込む状況でしょうか。
日本の椅子メーカーは日々、あちら立てればこちら立たずの矛盾と向き合っています。
無用な迷路とは書きましたが、このことが予想外の良い効果を生み出すのかも知れません。
日本らしさですね。

向かって左側が張替後です。
けっこう硬い合成皮革でしたのでヒダを寄せるのが大変でした。

2012年12月27日木曜日

写真は「HIROSHIMA」チェア。
深澤直人さんデザイン。マルニ木工製作の人気商品です。
ネット上ではかなり以前から話題になっていましたが、そう何度も実物に触れる機会もなく、この度当店に入荷して初めて気がついたこともいろいろありました。
そのあたりのことなど少し書いてみたいと思います。

国内の景気が不振ということもあって、何年も前から海外市場へ向けた家具作りを試みてきたメーカーがあります。
最初から海外へ目を向けたデザイン。
こちらのHIROSHIMAチェアもそのように聞いています。
特にサイズの面で顕著ですね。
入荷して初めて気が付いたことなんですが、北欧のデザイナー、カイクリチャンセンさんの「NO.42」と並べてみると幅、高さ、背もたれの位置、大きさ、勾配、座面の角度、脚の転ばせ具合等、ほぼ同じと言っていいです。
HIROSHIMAチェア製作にあたって、同じく北欧の超有名作「Yチェア」に負けないデザインをとの意気込みから、かなり北欧の椅子を研究してきた様子がうかがえます。

N.42チェアについては前にご紹介したとおり座面高が少し高すぎるようで前脚をカットする云々のお話をしましたが、HIROSHIMAチェアも多少そんな感じです。
ただHIROSHIMAチェアの場合、その使われ方に店舗用があったりしますので高いヒールや靴を履いての座面高というのを想定しているのかもしれません。
それにしても「ソラマチ」の中でずらり並んでいるHIROSHIMAチェアはいい感じです。
たくさん並べた時のことをイメージしながらデザインしてあるんですね

2012年12月16日日曜日

写真は東亜林業(株)の食堂椅子。
背もたれの籐張りが破れ始めました。
食堂椅子の背もたれの籐が破れたときの修理は通常メーカーに依頼していますが、今回はご予算の関係で当店でやりました。
こういった感じの修理は割と多いです。
メーカーへ修理に出せばきちんと新品同様に直してくれますが往復の運賃を含めると結構な金額がかかります。
そこまでじゃなくていいから、ほどほどにというお客様の場合当店で対応させて頂いています。
籐張りの仕事は初めてでしたのでさすがに1脚目は手こずりましたが2脚目以降はコツがわかってスムーズに進めることが出来ました。
以下は備忘のために記しておきます。

古い籐張りを剥がす際、フレームに傷が入らないようにすること。
籐シートは普通、フレームに掘り込んだ溝に接着剤、または接着剤+タッカーで上から丸芯で押さえ込んであります。
今回の修理品は3脚中1脚だけタッカー留めがしてありました。
細い溝の底に堅く打ち込んである何本ものタッカーを抜くのは結構面倒でフレーム木部に傷が入りそうで怖かったです。
そう言えば東亜林業さんの古い時代の椅子は型が同型でもちょっとした仕様の違うことがよくあります。

溝幅、溝深に合った丸芯を選ぶこと。
今回、5mmの溝幅に4.5mmの丸芯を叩き込みましたが、少々きつかった様に思います。
すでに20年ちかくご使用になられた椅子ですので今後同じような修理があるかどうか分かりませんが、一応タッカーは使いませんでした。
籐材料屋さんのマニュアルにもタッカーは打つなとありました。
修理が楽に出来るというのは大切なことですが、固定する力の加減がまだよくわかってないので、きつめの太さの丸芯を選んだことは結果として良かったと思いました。

悩んだのが塗装。
同じく籐材料屋さんのマニュアルには塗装はするなと書かれていました。
塗装を施すと籐が脆くなるから、とのことですが、お客様がご使用になっている椅子6脚のうち3脚だけの修理ということもあって結局色あわせの塗装をしてしまいました。
塗装するしないでどの程度違いがでるか今の段階ではよくわかりません。

張替え後の写真を撮り忘れましたので後日、写してきます。
とりあえず材料の写真を。
カゴメ編み。編み目は1/2インチという種類。
未漂白ですので今後、飴色に色が変わっていくと思います。

2012年12月8日土曜日

写真はkitoki。
小泉誠さんデザインのWK06テーブルです。
前回ご紹介したのと同じものですが、天板の表情が判るように接写してみました。
クリームを塗り込めたようなしっとり感と自然な光沢が見えますでしょうか。
木の魅力を活かしたオイル塗装ならではの仕上がりだと思います。
こちらのテーブルを製作したのは広島県府中市の若葉家具さん。
婚礼家具で有名な府中のメーカーで古くからお世話になっています。
当時、府中の婚礼家具メーカーは、箱を作ることに関して自他共に認める精巧な技術を誇っていました。
タンスの引き出しを閉めると他の引き出しが出てくるっていうやつですね。
(閉まっている引き出しを開けると、他の開いている引き出しが閉まるという言い方のほうが正確ですが)
ただそれ以上に「府中家具」の名を高からしめたのは、家具の塗装技術だったということは一般の方はご存じないかもしれません。
各メーカーが競い合って独創的な色を生み出し、それぞれの会社名を冠した○○色と呼ばれていました。
そこには真似したくとも真似できない「秘中の秘」ふうな調色のエッセンスがあったんだと思います。
当時のオリジナリティ溢れる状況がそのまま現在まで受け継がれていたらどうなっていたんだろうと思います。
はかなくも婚礼産業の衰退とともにあの当時の熱気は消えてしまいましたが、逆に現在の多様化した「好み」に自然に寄り添うかたちでオリジナルなものへのこだわりは残っているのかもしれません。

2012年12月6日木曜日

小泉誠さんデザインのテーブルが入荷しました。
何年か前に試作の段階で見せてもらったときは天板と脚の接合に不安があったんですが、実際出来上がってきたのを見るとしっかり、がっちり。
デザイン優先なんて言わせませんって感じです。
なんせ薄暗い倉庫の隅っこで試作を見たのが間違いでした。
ごめんなさい。
写真のテーブルは節ありホワイトオークの天板にウォールナットの組合わせですが、そのほかアッシュ、ブラックチェリーでも作れます。
よかったら見に来てくださいね。
当店は「木の家具のお店」を看板に謳っているせいか、ご来店頂いているお客様も木味、木の風合いを大切にされる方が多いような気がします。
それも木目や色味をきれいに揃えたツキ板よりは、多少バラついたにしても無垢板のほうに「木」らしさを感じる傾向が強いように思います。
無垢の家具中心の品揃えをしている当店にとってはありがたいことです。
で、当店としては、無垢板の長所短所をお客様にご説明することになるのですが、無垢板の物的な性質とは別に、外観のデザイン上のポイント、木の見せ方的なものもあわせてお伝えする場合があります。
特に近年デザインの趨勢がシンプルモダンということもあって、無垢板の「重い」見栄えがデザインの妨げになるケースもあり、そうした時のディテールの処理の仕方なんかをお話させてもらっています。
例えば写真の4Dキャビネットは天板、側板、前扉、台輪、見えがかりの部分はすべてウォールナット材、20ミリ厚前後の無垢板で製作されています。
20ミリというのはさほど厚い材料というわけではないのですが、それでも木口=部材の厚みを見せないデザインにすることで、無垢板の持つ「重さ」を消し、かつ素材をよりシンプルに見せるという処理になっています。
素材をよりシンプルに見せる、というのは実は痛しかゆしで、素材の良し悪しが、もしくは好みがはっきりと出やすくこの辺りはちょっと難しいところかなと思います。
モダンさという点では、扉と扉の隙間を、木の動きを考慮しつつ最小限にとどめることで、ウォールナットの素材の連続性を感じさせること。
それから最下部の台輪を奥に引っ込めてキャビネット本体の浮遊感、「軽さ」を演出しているところ、なんかでしょうか。

こちらのお客様、別注品ではなく店頭に並んでいる商品をお買い上げ頂いたのですが、まるで誂えたかのようにぴったりと納まりました。