2014年8月22日金曜日

写真はホワイトオーク材の食卓天板です。
前回アップした写真よりは色、杢の感じがお分かり頂けるかと思います。
塗装は大谷塗料さんのバトンクリア。
バトンは植物系オイルですが、蜜ロウに比べると少し光沢が出るようです。
汚れにくさはバトンのほうが強そうに思えます。
ただし取り扱いとかメンテナンスの容易さは蜜ロウが勝っています。
一長一短といったところでしょうか。

前回のソファと同じく、こちらも見えがかりに節あり材を使っています。
今でこそ節あり材の特有な表情、自然な木らしさを面白がって下さるようになりましたが、以前はこんな使い方をすると安手に見られました。
若いお客様が節あり家具を気に入って買って下さって、いざ配達するとお家のご老人が「なんだ、この安もんは!」とか言われたことがあります。
20年くらい前のお話ですが、日本人の無節信仰という木に対する感性がまだ残っていたころですね。

日本人の木に対する感性ということで言えば、こんなお話もあります。
一本の木には立木のとき、太陽の光をいっぱいに浴びる南東側の面があります。
南東側の面を「日面(ひおもて)」と言い、反対の北東面を「日裏(ひうら)」と言います。
自然、枝葉は日面側に多く、節も多く残ります。
飛鳥時代の工匠たちは木が自然に生えていた時と同じ状態に、柱の日面は南向きに建てることが、木を生かし建物を長持ちさせると考えました。
ところが古代建築の正門は中国の影響かどうか南を向いて造られています。
柱の日面を南面させると建物の正面玄関側は節のある材を使った荒い印象の見栄えになります。
飛鳥人はそれでも良いと考えました。
無節信仰の以前にはこういった感性もあったのです。
以上は法隆寺をはじめたくさんの飛鳥時代の伽藍の修復、復興にたずさわった宮大工の西岡常一さんがかつてお話されていたことです。
私としてはいつ頃それが変わっていったのかということに興味を覚えます。
いつか調べてみたいですね。






2014年8月21日木曜日

写真は最近入荷したデイベッドソファです。
ソファベッドと違うところは、背もたれを倒すなどの余分な動作をせず、すぐそのまま寝られることでしょうか。
長さ180センチ幅75センチのフラットで少し固めの座面は、うたた寝するのに最適です。
汗が気になる方のために座面下には、シーツやパッドを収納できるスペースも嬉しいところですね。
とは言っても当店ではどちらかと言えばソファの要素を重視して導入を決めました。
これにかぎらないんですが、よくよく眺めているうちにこのソファの置かれているお部屋のイメージがだんだんはっきりしてきました。
するとソファに並んで座っているご家族のお顔までが眼に浮かぶようになってきます。
こういう時は売れます。(売れないことも結構あるんであてにならない)
それからまだちょっとうまく説明できないんですが、「見たことありそうで、無い」デザインに思えます。
ちょっと不思議な感じを受けました。
デザインは小泉誠さん。
小泉さんのデザインは個人的には、最初はよくわかんないけど、後からじわじわ良さが分かってきて、いつの間にか小泉ワールドに嵌っていくというパターンですね。
ディテールの隅々にまで細やかな気を使っていながらそれを感じさせないところがすごい。
フレーム材はホワイトオーク。
太くて濃い木目が豪快ですね。
最近の家具では同じブナ科のレッドオーク材もよく使われています。
着色前なら見分けがつき易いのですが、家具屋の店頭に並んでいる状態では違いが分かりづらいかもしれません。
ちなみに洋樽の材料はホワイトオークのほう。
レッドオークでは駄目だそうです。
木の成長が止まると水の通り道の導管が塞がれますが、ホワイトオーク材の導管の塞がり具合とわずかな木の呼吸が洋酒の味わいに絶妙に影響しているとのこと。
微妙なものですね。






2014年8月7日木曜日

写真はクスノキのチェストとドレッサー。
クスノキ本来の色目はこんな感じです。
濃く着色することで材の表情を浮き立たせる一方、渋めになりすぎないようモダンなデザインで仕上げてあります。
クスノキは家具屋としてはわりあい身近な木材で、なによりその芳香が強い印象ですね。
樟脳の匂い。

飛鳥時代の日本の仏像はほぼすべてクスノキでつくられているようですが、これは中国で霊木視された香木「白檀(ビャクダン)」の代用だそうです。
ちなみに飛鳥仏の中で唯一の例外が有名な「広隆寺の宝冠弥勒像」。
こちらは赤松とクスノキのコンビで、後年の補修はヒノキ材です。
用材として赤松は朝鮮半島の木。
同じくクスノキは木へんに南と書くように日本の木。
加えて半跏思惟の姿で微笑む西域風の面立ち。
宝冠弥勒像がどこで作られたかについては、いまだ判明できないようです。
まああまり科学的に解明されるのも味のない気がしますが。

それはともかく、「樟」と「楠」。
どちらも「クスノキ」と読ませますが、今まで字のニュアンスの違いを気にしたことがありませんでしたのでちょっと調べてみました。
分類的には「樟」はクスノキ科ニッケイ属、「楠」は同じくクスノキ科のタブノキ属に分けられるそうです。ニッケイは肉桂、ニッキ、京都の八つ橋の香り付けに使われてますね。
シナモンも同じくクスノキ科の樹皮を乾燥させた香料ですが、スリランカ原産のクスノキを原料とした場合に特にそう呼ばれるらしいです。

一方、タブノキは平地に生える大高木で、鳥取県では神社の周辺でよく見かけます。人の手で守られているということですね。
用材としてのタブノキはもう少し山寄りで自生しているんでしょう。
タブノキは線香の原料の一部に使われていたようですが、タブノキの樹皮から線香を自作した方のブログを読むとさほど匂わないそうです。
ただ葉を千切ると樟脳の匂いがするそうで、ニッケイ属、タブノキ属ともにクスノキ科の特徴である芳香に関しては同じですね。
「クスノキの家具」と表記する場合、家具屋的には「樟」と書くことが多く、これは樟脳の箪笥の虫除け作用を連想させる、なかなか良いやり方かなと思ってましたが、実際、写真のチェスト、抽斗の箱組みだけは桐を使っていますがその他はクスノキの総無垢の作りで、しっかりと香ってました。