2014年8月7日木曜日

写真はクスノキのチェストとドレッサー。
クスノキ本来の色目はこんな感じです。
濃く着色することで材の表情を浮き立たせる一方、渋めになりすぎないようモダンなデザインで仕上げてあります。
クスノキは家具屋としてはわりあい身近な木材で、なによりその芳香が強い印象ですね。
樟脳の匂い。

飛鳥時代の日本の仏像はほぼすべてクスノキでつくられているようですが、これは中国で霊木視された香木「白檀(ビャクダン)」の代用だそうです。
ちなみに飛鳥仏の中で唯一の例外が有名な「広隆寺の宝冠弥勒像」。
こちらは赤松とクスノキのコンビで、後年の補修はヒノキ材です。
用材として赤松は朝鮮半島の木。
同じくクスノキは木へんに南と書くように日本の木。
加えて半跏思惟の姿で微笑む西域風の面立ち。
宝冠弥勒像がどこで作られたかについては、いまだ判明できないようです。
まああまり科学的に解明されるのも味のない気がしますが。

それはともかく、「樟」と「楠」。
どちらも「クスノキ」と読ませますが、今まで字のニュアンスの違いを気にしたことがありませんでしたのでちょっと調べてみました。
分類的には「樟」はクスノキ科ニッケイ属、「楠」は同じくクスノキ科のタブノキ属に分けられるそうです。ニッケイは肉桂、ニッキ、京都の八つ橋の香り付けに使われてますね。
シナモンも同じくクスノキ科の樹皮を乾燥させた香料ですが、スリランカ原産のクスノキを原料とした場合に特にそう呼ばれるらしいです。

一方、タブノキは平地に生える大高木で、鳥取県では神社の周辺でよく見かけます。人の手で守られているということですね。
用材としてのタブノキはもう少し山寄りで自生しているんでしょう。
タブノキは線香の原料の一部に使われていたようですが、タブノキの樹皮から線香を自作した方のブログを読むとさほど匂わないそうです。
ただ葉を千切ると樟脳の匂いがするそうで、ニッケイ属、タブノキ属ともにクスノキ科の特徴である芳香に関しては同じですね。
「クスノキの家具」と表記する場合、家具屋的には「樟」と書くことが多く、これは樟脳の箪笥の虫除け作用を連想させる、なかなか良いやり方かなと思ってましたが、実際、写真のチェスト、抽斗の箱組みだけは桐を使っていますがその他はクスノキの総無垢の作りで、しっかりと香ってました。