2013年10月23日水曜日

昔の話ですが、「室内」というインテリア雑誌には毎号、木工機械メーカーの広告が掲載されていました。
その中で記憶に残ってるのがNCルーターで「能面」を彫る写真を使った広告です。
超高速回転する軸先の刃の残像と大量に弾き飛ばされる木屑と粉塵の先に見える、驚くほど滑らかな木肌の精巧に削りだされた女面という構図でした。
機械メーカーの名前は忘れてしまいましたが、コンピュータ制御というハイテクなものが木工と結びついてることに当時は不思議な印象を持ったことは覚えています。
今でこそ投稿サイトで動画をいくらでも見ることは出来ますが、初めてルーターのアームが動いている姿を実際に目にした時には、機械とは思えない優美で滑らかな動き、そして正確さに驚きました。
なにより加工工程に合わせて機械が「自分で」刃の種類を選択し交換した場面では目が釘付けになりました
プログラミングされているという事実を忘れて、見入ってしまった記憶があります。
まあ実際の木工の現場ではロマンチックな話ではないのかもしれませんが。
NCルーターはデザインの新たな領域を切り開く可能性があると言うようなことを前回書きましたが、習熟にはかなりの困難があるようで、椅子メーカーさんの悩みの種は機械の代金の支払以上に熟練したプログラマー、NC職人の確保と育成だというように聞いています。
まずは機械を使いこなせる人間が優先で、それ以外はちょっと待ってと言う感じでしょうか。

写真は宮崎椅子製作所のPEPEチェア。
正円の脚先が肘へ向かってだんだん長四角になりつつ、肘を過ぎる辺りから正円に戻り、背もたれに至るデザインはNCの技術を取り入れたものですね。
宮崎さんの凄いのは、加工の効率化を図るだけでなく、まるでデザインの可能性をNC技術の中に探っているみたいに思えるような使い方をしているところです。
次回ご紹介したいと思います。